加藤電機は2015年11月20日、東京・台東区で「広域ロボット検索システム」を使った認知症の徘徊者捜索実験を実施した。広域ロボット検索システムは、同社の「SAN(Security Alliance Network)フラワー見守りサービス」を応用したもの。認知症患者に送信機である「SANタグ」を装着して、徘徊などで行方不明になったときに素早く位置を特定する。

 装着するSANタグは、重さ約15グラム、サイズは48mm×37mm×10mm(突起物を除く)。実験エリア内に設置した「SANアンテナ」に15秒ごとに位置情報を送信し、SANアンテナはその位置情報をおよそ10分に1回の頻度でインターネット上の「SANクラウドサーバー」へアップする。捜索側は、まずスマートフォン(スマホ)のブラウザーでSANクラウドサーバーへアクセスして、認知症患者の大まかな位置を特定。重さ約70グラムの「SANレーダー」を使ってSANタグとの距離や方向を確認しながら、認知症患者を捜索する。

30分弱で徘徊役の発見に成功

スマホのブラウザーでSANタグが時間経過とともに移動した様子を確認できる
スマホのブラウザーでSANタグが時間経過とともに移動した様子を確認できる
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 実験は台東区役所分庁舎(台東区東上野4丁目)を中心とするエリアで実施された。徘徊役の5組10人がSANタグをポケット付きシューズやお守り袋に装着して、台東区役所の分庁舎を午後2時45分前後に出発。それから15分ほど遅れて、5班に分かれた捜索チームがそれぞれ目標の徘徊役を探して分庁舎をスタートした。

SANレーダーに表示された「遠くにいます」というメッセージと方向
SANレーダーに表示された「遠くにいます」というメッセージと方向
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徘徊役まで130メートルの距離
徘徊役まで130メートルの距離
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 捜索チームはまずスマホのブラウザーを使ってSANクラウドサーバーへアクセスして、目標となる徘徊役の大まかな位置を確認した。ブラウザーからは徘徊役の現在位置だけでなく、過去にどのSANアンテナの近くにいたのかを確認できるので、徘徊役の大まかな移動方向が予想できる。今回の実験では江戸通り、言問通り、昭和通り、春日通りで囲まれたエリア内に12台のSANアンテナを設置してSANタグの位置情報を収集した。実際のケースでSANレーダーのカバーエリアを認知症患者が外れた場合は、SANタグの信号を最後に確認したSANアンテナの位置を手がかりに捜索することになる。

徘徊役をつかまえたところ
徘徊役をつかまえたところ
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SANレーダーにはSANタグまでの距離が「0.0m」と表示されている
SANレーダーにはSANタグまでの距離が「0.0m」と表示されている
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 SANレーダーがSANタグの電波を直接キャッチできる範囲(数百メートルから最大4キロメートル)に近づくと、SANレーダーの画面にSANタグが存在する方向と「遠くにいます」というメッセージが表示される。この情報を手がかりにさらに追いかけていくとSANタグへの距離と方向が表示されるようになる。

 記者が同行した捜索チームは、台東区役所分庁舎を出発して30分弱で合羽橋の道具街近くにいた徘徊役を発見することに成功した。