完成した「甑島蓄電センター」(奥)と太陽光発電所(手前)
完成した「甑島蓄電センター」(奥)と太陽光発電所(手前)
(出所:日経BP)
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関係者を集めて竣工式が開かれた 
関係者を集めて竣工式が開かれた 
(出所:日経BP)
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再エネ併設型蓄電池と「甑島蓄電センター」の系統連系方式の違い 
再エネ併設型蓄電池と「甑島蓄電センター」の系統連系方式の違い 
(出所:薩摩川内市)
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 鹿児島県薩摩川内市と住友商事は11月19日、薩摩川内市の甑島(こしきしま)で、電気自動車(EV)の使用済み電池を再使用(リユース)した「EVリユース蓄電池システム」の竣工式を開催した。この蓄電池システムは「甑島蓄電センター」と名付けた。今後、島内の電力系統に直接連系し、九州電力の協力を得つつ、太陽光・風力の出力変動による系統運用への負荷を抑制する実証に取り組む。

 「甑島蓄電センター」に導入した蓄電池の定格出力は800kW、容量は600kWhとなる。日産のEV「リーフ」に搭載されていたNEC製のLiイオン蓄電池をユニットごと取り外してリユースした。導入した中古蓄電池は、リーフ36台分となる。

 設置場所は、旧浦内小学校の校庭で、甑島蓄電センターの隣には出力100kWの太陽光発電所を建設し、19日に同時に竣工した。100kWの太陽光発電設備と800kWの甑島蓄電センターは、それぞれに個別のパワーコンディショナー(PCS)と昇圧設備を備え、島内の電力系統に別々に連系する。

 メガソーラー(大規模太陽光発電所)事業者が大型蓄電池を併設し、太陽光と蓄電池の合成出力を連系する例は、すでに徳之島などで例がある。今回の甑島のように大型蓄電池を単独で直接、系統連系し、系統内の太陽光・風力の出力変動対策に活用する「系統蓄電池」の設置は、電力会社以外では、国内初めてとなる。

 実証では、当初1カ月間、隣接する太陽光発電の交流回路に蓄電池の出力を充放電し、太陽光との合成出力として連系し、蓄電池システムの性能や安全性・信頼性を評価する。その後、蓄電池システムを電力系統との直接連系に切り替え、島内のほかの太陽光・風力も含めた出力変動対策として活用する。

 甑島には、現在、今回稼働した100kWの太陽光を含め、太陽光310kW、風力250kWの変動性の再エネ設備がある。九州電力では、甑島での太陽光の接続可能量を400kWと公表している。800kWの系統蓄電池の活用で、接続可能量の上積み余地も検証する。

 今回の実証プロジェクトでは、自治体が主体となって再エネの接続問題を解決する「自治体モデル事業」を目指す。実証の成果を受け、将来的に「薩摩川内モデル」として、複数の再エネ事業者に対する電力安定化サービスを全国展開することも視野に入れている。