TACCのスーパーコンピューター「Hikari」
TACCのスーパーコンピューター「Hikari」
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側面には富士山とカウボーイの絵。そしてNTTファシリティーズやNEDOの名前も
側面には富士山とカウボーイの絵。そしてNTTファシリティーズやNEDOの名前も
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 米University of Texas、Austin校のTexas Advanced Computing Center(TACC)は、キャンパス内に設置した直流で駆動する高性能コンピューター(HPC)「Hikari(光)」を、Austinで開かれていたHPCの学会と展示会「SC15」の参加者に公開した。「稼働し始めてまだ1週間ぐらい。スーパーコンピューターがいくつかあるTACC内で最も省電力性能が高い」(TACC)という。

 Hikariは、米Hewlett-Packard(HP)社の「HPE Apollo 8000」シリーズに基づくHPC。プロセッサーには米Intel社のHaswellベースのXeonを使い、1万コア分以上利用している。
インターコネクトには1レーンの伝送速度が約25Gビット/秒のEDR Infinibandを利用している。実行性能はおよそ400TFLOPSだとする。

 これだけでは、TOP500では中位に相当するありふれたシステムに過ぎないが、このHikariには大きく2つの点で特徴があるという。(1)装置を水冷システムで冷却している、(2)直流給電で動作可能で実際に約300kWの太陽光発電システムと接続されている、という2点だ。

 特に(2)は、日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援およびNTTファシリティーズの協力を得て実現したとする。一般的にHPCやデータセンターのサーバー機はUPS(無停電電源装置)を介して電力を得ている。結果、UPSからプロセッサーまで、AC-DC変換、またはDC-AC変換を計3回経ることになる。

 一方、直流給電システムではUPSの出力が直流のままで、サーバー機内でのDC-DC変換後にプロセッサーに給電するため、電力損失が多いAC-DC変換が1回で済む。太陽光パネルを接続することを考えると、最大4回分のAC-DC変換を削減できる。さらに、今回はUPSの出力電圧を48Vではなく380Vとしたため、送電ケーブルが細くて済み、しかも送電ロスがより少ない。「直流給電にしたことで約10%の電力を節約できた」(TACC)。

 TACCは、システム全体の消費電力を明らかにしていないが、400TFLOPSのシステムの中には200kW前後で動作するものもある。定格300kWの太陽光パネルがあれば、日中はほとんどの電力需要を太陽光パネルの出力でカバーすることもできそうだ。