作製されたペロブスカイト太陽電池の変換効率分布、PCEは 変換効率 
作製されたペロブスカイト太陽電池の変換効率分布、PCEは 変換効率 
(出所:物質・材料研究機構)
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 物質・材料研究機構(NIMS)は11月2日、ペロブスカイト太陽電池の開発で、セル(発電素子)面積1cm2以上で変換効率を約16%に向上させると共に、実用化の目安とされる信頼性テストをクリアしたと発表した。

 電子とホール(正孔:電子の抜けた穴)の抽出層に用いられていた材料を有機物から無機物に変更することなどで実現した。NIMS・太陽光発電材料ユニットの韓礼元ユニット長などの研究グループの成果。「Science」誌オンライン版で10月30日に公開された。

 ペロブスカイト太陽電池の開発では、高い変換効率を持つと報告された研究成果は、いずれもセル面積が小さく(約0.1cm2)、信頼性も低いものが多いという。そのため実用化には、セル面積の拡大と信頼性の向上が急務となっている。

 研究チームは、これらの問題を解決するため、電子抽出層とホール抽出層に用いられた有機材料を無機材料に変更した。無機材料で作製された電子とホールの抽出層は電気抵抗が高いため、層の厚さを数nm(ナノメートル)まで薄くする必要がある。しかし、これらの薄層は面積が拡大すると、ピンホールと呼ばれる欠陥が多くなり、変換効率が低下する。そこで、ホール抽出層と電子抽出層にそれぞれLiイオンとNbイオンを高濃度に添加して導電性を10倍以上に向上させた。それにより、大面積でもピンホールの少ない10~20nmまでの厚い層を使用できるようになったという。

 その結果、面積1cm2以上のセルで、変換効率約16%を高い再現性で実現できた。さらに、電子抽出層とホール抽出層ともに無機材料を用いることで、実用化の目安とされる光強度(1sun)の太陽光で1000時間、連続照射しても、変換効率の低下が10%以内に抑えられ、優れた信頼性を示したという。