最近のクルマはエレクトロニクスの塊だ。例えば、多数のマイコン(MCU)が搭載されている。ただし、クルマはMCUにとっては優しい動作環境ではない。例えば、MCUの電源がいつも安定しているとは限らない。電源が不安定になれば、さまざまな問題が発生する。

講演する土居 直史氏 日経エレクトロニクスが撮影。
講演する土居 直史氏 日経エレクトロニクスが撮影。
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図1●電源電圧降下でさまざまな問題が発生 ルネサス システムデザインのスライド。
図1●電源電圧降下でさまざまな問題が発生 ルネサス システムデザインのスライド。
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図2●フロントローディング化が進行 ルネサス システムデザインのスライド。
図2●フロントローディング化が進行 ルネサス システムデザインのスライド。
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 ルネサス システムデザインの土居 直史氏(第一要素技術事業部 デザインオートメーション部主任技師)は、車載MCUの電源電圧降下の解析に関して講演した(写真)。この講演は「ANSYS Electronics Simulation Expo」(2015年10月23日に東京で開催)で行われた。同氏によれば、電源電圧降下はさまざまな問題を引き起こす。応答遅れや性能劣化、動作遅延、さらに外部への雑音放射の増加などである(図1)。

 以前は電源電圧降下への対応は、後手後手に回りがちだった。チップ製造後に試験を行って問題が発覚すると、その対策を打つという段取りである。それが、次第に設計段階で電源電圧降下に対処するようになった。「電源ノイズ対策から電源ノイズ設計に移行している。さらに、より設計の上流で電源ノイズを考慮するようになってきた。いわゆる、フロントローディング化だ」(土居氏)。

 同氏によれば、サインオフ検証段階やレイアウト設計段階では、以前から電源電圧降下やそれに伴う問題をEDAツールを使って解析してきた。例えば、解析ツールとしては、米ANSYS社の「RedHawk」を使っている。2~3年前から、上流のフロアプラン設計段階でも、RedHawkを使うようになった(図2)。RedHawkはいくつかの機能を備えるが、同氏は、主な機能は動作電圧降下解析と、CPM(Chip Power Model:チップのインピーダンス・電流の縮退モデル)作成だとした。