ソーラーフロンティアの東北工場 (写真:ソーラーフロンティア)
ソーラーフロンティアの東北工場 (写真:ソーラーフロンティア)
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 昭和シェル石油の子会社で「CIS型」太陽光発電パネルを製造するソーラーフロンティアは、太陽光発電パネルの定格出力1W当たりの製造コスト(W単価)を現行の50米セント/W超から2~3年のうちに約40米セント/Wに低減するメドを付けた。日経エレクトロニクスの取材に対し明らかにした。40米セント/Wが早期に実現すれば、太陽光発電パネルの製造コスト低減をけん引する中国メーカーを抜いて、パネルのW単価の低さで世界1位に躍り出る可能性がある。

 製造コストの低減は、2015年春にテスト稼働を始めた、同社の東北工場(宮城県黒川郡大衡村)に導入した新型の製造ラインを検証する中で見えてきたもようだ。同工場の生産規模は年産最大150MWで、2016年の本格稼働を予定する。

 新型の製造ラインでは、1W当たりの設備投資額や運用費が従来の2/3と低い。さらに、太陽光発電パネル1枚当たりの製造時間は従来の24時間から8時間へと大幅に短縮する。加えて、太陽電池の素子構造なども改善し、モジュール変換効率が14.7%以上に向上する見通しであることで、1W当たりの製造コストを約2割下げられるメドがついたとする。「減価償却が終わったら、30米セント/Wも見えてくる」(ソーラーフロンティア)。

 東北工場の生産規模は小さいが、ソーラーフロンティアは同工場での技術に基づく年産約1GW規模の工場を2018年に海外で稼働させ、日本を含め計年産2GWの生産体制にする計画。約40米セント/Wという超低コストの太陽光発電パネルで世界に本格的に打って出る姿勢だ。海外工場の建設場所はまだ決まっていないが、「需要に近い場所での地産地消を目指す」(ソーラーフロンティア)という。

太陽光発電の理論的な発電コストは4.6円/kWhに

 ちなみに、約40米セント/Wという製造コストは、日本円では約49円/W。1kW当たりでは4万9000円となる。このコストがそのまま導入費用になると仮定し、パネルは20年間、故障せずに稼働し続けると仮定。金利はかからず、さらに、パワーコンディショナーは業界最安値の約3万円/kWの製品を10年で交換して利用すると仮定すると、日本での発電コストは約4.6円/kWhとなり、既存の発電技術の中で最も低い水準になる。稼働期間が20年を超えて伸びれば、発電コストはさらに下がる。

 もちろん、実際の太陽光発電パネルの導入には、パネルの製造コストに価格マージンが乗り、さらに設置費用や電源回りの工事費など「BoS(Balance of System)」と呼ばれる費用が加算されるため、総導入費用はパネルの原価の3倍前後になる例が多い。このため、パネルの製造コスト低減が、太陽光発電の発電コスト低減に直ちには結び付かない。

 それでも、BoSは太陽光発電所の規模や設置方式によってはかなり低減できることから、太陽光発電の理論的な発電コストは、パネルの原価に基づくコストに近づいていくと考えられる。