目指すは「Future IoE:Smart Life」――。東芝の執行役上席常務 インダストリアルICTソリューション社 社長、錦織弘信氏は、同社主催のイベント「東芝ICTソリューションフェア2015」(2015年11月5日〜6日)の基調講演で、IoT(Internet of Things)を核とした事業方針について話した。

 東芝はIoT事業促進を目指して2015年4月に組織再編を実施。グループ内のICTソリューション関連部門を社内カンパニーのインダストリアルICTソリューション社に統合し、新たなIoTサービスやソリューションの創出に注力している。

写真1●東芝 執行役上席常務 インダストリアルICTソリューション社 社長の錦織弘信氏
写真1●東芝 執行役上席常務 インダストリアルICTソリューション社 社長の錦織弘信氏

 東芝ICTソリューションは「モノ×ICT×人」をテーマとし、キーワードとして「人を想うIoT」を掲げる。錦織社長は基調講演の冒頭で、2020年におけるIoT市場規模が200兆円、2013年~2022年までの10年間におけるIoTの経済価値が1730兆円という調査報告を示しながら、ハードウエアとソフトウエアの主従が逆転している状況を指摘。スマートフォンに代表されるような、ハードウエアからソフトウエアを分離し、クラウドを活用して機能を追加・更新していくモデルが、工業製品分野にも浸透していることを強調した。そのうえで、「今後はハードウエアの売り切りではなく、ライフサイクルを考えてソリューションを提供していく必要がある」(錦織氏)と述べた。

続いて錦織氏は、東芝の目指すIoT事業の発展形について説明。ステージ1、ステージ2、ステージ3の段階を明示した。ステージ1はMachine to Machine(M2M)によるモノの状態の見える化、ステージ2は収集したデータの活用に基づく事業改善、そしてステージ3はモノと人を相互につなげ、協働を通じて実現する価値向上である。

 ステージ1の代表例は、道路システムや公共システム、医療システム、エネルギー管理システムといったインフラ関連の遠隔監視・保守サービス。錦織氏は、これまでの経験・実績を今後はIoTに活用し、故障予知・予防に踏み込んでいきたいとした。

ステージ2の例として挙げたのは、三重県・四日市市にある同社の半導体工場だ。同工場ではチップにセンサーを埋め込んでリアルタイムでビッグデータを分析し、数兆通りもの組み合わせからベストな工程を選択。こうした取り組みにより、歩留まり改善、生産効率と稼働率の最大化に努めている。インダストリー4.0やSmart Factoryの典型といえる。