半導体の微細化(いわゆるMore Moore)の進展に陰りが見え、微細化以外の技術(More than Moore)に期待が寄せられるようになった。More than Mooreの1つとして、TSV(Through Silicon Via)を使った3次元実装ICがある。TSVベースの3次元実装をスーパーコンピューターのプロセッサーICに適用できるか、その検討に関連した講演があった。

講演する汾陽 弘慎氏 日経エレクトロニクスが撮影。
講演する汾陽 弘慎氏 日経エレクトロニクスが撮影。
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図1●RedHawk-GPSの評価に使った実装モデル 富士通のスライド。
図1●RedHawk-GPSの評価に使った実装モデル 富士通のスライド。
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図2●RedHawk-GPSの実行結果の例 TSV位置の違いでIRドロップが変わることを確認。富士通のスライド。
図2●RedHawk-GPSの実行結果の例 TSV位置の違いでIRドロップが変わることを確認。富士通のスライド。
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 この講演は「ANSYS Electronics Simulation Expo」(2015年10月23日に東京で開催)で行われた。登壇したのは富士通の汾陽 弘慎氏(アドバンストシステム開発本部 プロセッサ開発統括部 第二開発部)である(写真)。

 同氏は、TSVベースの3次元ICを開発する際に重要なPI(Power Integrity)解析や熱解析が首尾よく行えるかどうかを検討し、その結果を発表した。検討には米ANSYS社の3つの解析用ソフトウエアツールを使った。「RedHawk-GPS」、「ANSYS RedHawk」、「ANSYS Sentinel-TI」である。

 今回の検討の目的は4つあった。(1)レイアウト設計や論理設計前に電源ネットワークのPI解析が行えるか。(2)ソフトウエアツールを使って3次元ICを本当に解析できるか。(3)3次元ICのPI・熱解析フローを構築できるか。(4)スパコン用プロセッサーを3次元ICとして実現できるかである。

 まず、(1)の「レイアウト設計や論理設計前に電源ネットワークのPI解析が行えるか」である。これにはRedHawk-GPSを使った。レイアウト設計データがない状態でも、このツールを使えば、電力エリアをGUIまたはスクリプトで定義できる。定義した電力エリア情報を使って、開発早期にPI解析を行える。フェースアップのダイ1個とTSVを使った実装モデルで検討した(図1)。

 TSVが1辺にしかない実装と4辺にある実装を解析したところ、前者に比べて後者はIRドロップが85%小さいことを確認できた(図2)。またTSVの本数やピッチを変えたときに、IRドロップに差が出ることも確認可能だった。この結果、RedHawk-GPSを使った開発早期のPI解析でも、IRドロップの傾向を把握することが可能なことが分かった。