電池討論会で発表
電池討論会で発表
愛知県名古屋市の愛知県産業労働センターで開催。
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 ソニーは、電解質に固体材料を活用した全固体電池を試作した。

 樹脂フィルム上に固体電解質を成型する薄膜型の2次電池で、新規の正極材料を開発することで実現した。折り曲げなど形状の自由度が高いほか、作製時に高温処理が不要で製造コストの低減が見込めるという。小型・薄型のウエアラブル機器や、折り曲げに対応できるフレキシブルデバイスへの搭載を想定し、数年後の実用化を目指す。

 2015年11月11日から開催の「第56回 電池討論会」(愛知県産業労働センター、11/11~11/13)で発表した。ソニーは昨年、全固体の薄膜型2次電池の試作に関して論文誌で発表していたが、電池討論会で発表するのは今回が初めてという。固体電解質を用いる全固体電池は、従来の有機系電解液を用いる電池に比較して安全性が高いとされ、世界中で研究開発が活発化している。ソニーの参入により、今後電極材料や周辺部材などの研究開発も促進される可能性がある。

 ソニーが発表したのは、全固体電池に向けた非晶質の正極材料と、その特性評価結果。従来一般的な全固体薄膜2次電池では結晶材料を正極活物質に用いるため、高温の成膜プロセスが必要だったが、ソニーの開発材料は非晶質で、成膜時に基板加熱を必要としないという。このため、ほとんどの製造過程を室温で実施できると見込む。

 正極材料として用いたのは、リン酸系のリチウム金属化合物。試作品は、厚さが400μmのポリカーボネートフイルムを基板とし、スパッタリング装置を用いて正極や固体電解質、負極を積層することで作製した。固体電解質にはリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)を成膜し、電解質の厚みは500nm程度という。正極材料の遷移金属元素としてはNiやMn、CoやCu、Agなどを評価した。

 試作品の評価結果では、遷移金属にNiを用いた時が最も高い放電容量を示し、正極活物質の重さ当たりの容量では330mAh/gと、十分な値を測定したという。レート特性では、30Cといった急速充放電も可能であることを確認している。なお、ソニーの講演番号は【2F17】。

 試作した電池の充放電サイクル特性については、2000サイクル程度まで駆動することを確認済みだ。実用化に向けて残る課題は、自己放電を抑制すること。今後の特性改善などで性能をさらに向上させる考えだ。