福岡県みやま市と、九州大学の炭素資源国際教育研究センター、共進化社会システム創成拠点は11月2日、再生可能エネルギーを主体にした電力小売りにおける需給バランスを維持するソフトウエアを共同開発すると発表した。再エネ出力、気象、時間帯、電力消費、消費者行動などのビッグデータを解析することで実現する。地方自治体が主導する地域エネルギー事業での利用を想定する。

 みやまスマートエネルギー(みやまSE)、筑邦銀行のほか関係する各社が12月にコンソーシアムを形成し、みやま市内でビックデータの解析やその効果などについて検証する実証事業を始める。

 電力小売りの全面自由化を契機に、地域の再エネを活用した電力小売り事業で、地域活性化を目指す動きが活発化している。だが、需給バランスが一定以上、乖離する「インバランス」は新規参入者の大きなリスクだ。インバランスが発生した場合のペナルティ(インバランス料金)は、30分3%以内の不足、3%を超える不足ともに従量料金制が採用されており、この料金負担が事業計画の重荷になっている。

 従来、需給バランスの維持では、需要に合わせて供給を調整することが基本になっている。これに対し、今回、開発するソフトウエアは、電力の需要家も需給調整に参加し、需給調整機能をローカライズし、エリアごとに需給を制御することで、インバランスの発生をゼロにする。

 具体的には、以下の構成で運用し、インバランスのゼロ化を目指す。

 (1)発電、消費、気象などのビッグデータを常時、収集して瞬時に解析し、発電と消費それぞれの電力ロードカーブの予測を30分毎に立てる。

 (2)太陽光発電の電力をごく短い時間、一時的に蓄電池に貯めてから供給することで、急峻な出力変動を平滑化し、需要側の予測値と合わせやすくする。

 (3)電力量が過不足する場合は30分毎に、需要家側で調整する。エリア全体をカバーする自家発電設備や電気自動車(EV)充電設備、ヒートポンプ給湯機、燃料電池コージェネレーション(熱電併給)システムなどを活用する。またエリア全体でのデマンドレスポンス(DR:需要応答)も活用する。

 (4)インバランス・ゼロ化で生まれる利益は地域に還元しつつ、事業収支を保つ。PFI(民間資金による社会資本整備)/PPP(公民連携)手法を用いた一連の金融モデルを検討する。

 コンソーシアムに参加する企業と役割は以下の通り。九州大学(気象、電力、消費行動などビッグデータの解析、需給調整アルゴリズムの開発)、みやまSE(電力需給オペレーションシステムの開発)、筑邦銀行(資金面、実証事業管理面の支援・PFI/PPPに関する支援)、みやま市(電力に関するビッグデータの収集、電力事業ノウハウの全国自治体への展開)、日本PFI・PPP協会(分散型電源や公設民営化などの際のPFI/PPPによるファイナンスの検討)、グルーヴノーツ(大量のトランザクションのバックエンド)、九州スマートコミュニティ(電力需給オペレーションシステム・CISシステムの運用)、大手電機メーカー(エリア全体の設備設計ソリューション)、イサハヤ電子(蓄電池や自家発電機などを活用した電力制御)、LEシステム(レドックスフロー電池の活用検討)、パワー・ジャパン・プリュス(リチウム・炭素電池の活用検討)