開館した「スマート未来ハウス」
開館した「スマート未来ハウス」
(出所:山形大学)
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 山形大学は10月15日、山形県米沢市内に「スマート未来ハウス」を開館した。同ハウスは、有機エレクトロニクスに関する実証施設で、文部科学省国際科学イノベーション拠点事業の一部として建設した。窓に半透明の有機薄膜太陽電池などを設置した。

 「スマート未来ハウス」は木造・一部鉄筋コンクリート2階建てで延べ床面積230m2、米沢市から無償提供を受けた米沢オフィスアルカディア敷地内に建設した。有機エレクトロニクスに関する実証工房として20年後の近未来の住環境を実証研究する。

 同ハウスには、半透明の有機薄膜太陽電池を貼った「発電する窓」を設置、今後年間を通じて発電効率を検証していく予定。このほか、天井や壁に「壁紙ディスプレイ」を導入し等身大での遠隔会議や遠隔医療診断に活用する。寝室には、有機EL照明、有機生体センサーを内蔵したベッドを導入し、寝ている人の心拍数・呼吸数・血圧などを測定できる。

 有機薄膜太陽電池の開発は、山形大学有機エレクトロニクス研究センターと有機エレクトロニクスイノベーションセンター、伊藤電子工業(山形県寒河江市)の3者共同で取り組んでいる。伊藤電子工業の持つ半透明有機デバイス作製技術と、有機エレクトロニクス研究センターの有機太陽電池材料技術、そして有機エレクトロニクスイノベーションセンターのパネル・モジュール開発技術を組み合わせた。

 現在、主流となっている太陽電池が全波長を使って発電するのに対し、有機薄膜太陽電池は紫外光や近赤外光のエネルギーで発電し、可視光の一部を透過させることで半透明化を実現した。

 今後、大面積化が進めば、住宅の窓やカーポートの屋根、商業・公共施設の窓材など透明性が求められる場所への利用も見込まれるという。光の波長によって透過と吸収をコントロールできるため西日対策などにも有効で、超薄型で柔軟な特性を生かすことで、アーチ状や折りたたみ屋根、携帯端末やパソコン周辺機器などの充電用としても有望視される。