経済産業省・新エネルギー対策課の松山泰浩課長
経済産業省・新エネルギー対策課の松山泰浩課長
(出所:日経BP)
[画像のクリックで拡大表示]

 太陽光発電協会(JPEA)は10月23日、都内で「太陽光発電シンポジウム」を開催した。経済産業省・新エネルギー対策課の松山泰浩課長が登壇し、「PV100年構想~さらなる太陽光の導入拡大に向けて~」と題して講演した。

 松山課長は、「ドイツは固定価格買取制度(FIT)の成功例とも言われるが、必ずしもそうではない。FITを導入した国々はドイツも含め、買取価格の低下で太陽光の普及が急減する段階で、自国の太陽光関連産業をいかに持続的に成長させるかで苦しんでいる。日本もそうした段階に入ってきている」との認識を示した。

 そのうえで、長期エネルギー需給見通しで示した2030年度における電源構成(ベストミックス)で決めた太陽光の導入量である64GW(構成比7%)という数字は、「今後、太陽光が一大産業になることを意味する。(買取価格の低下など)いまの状況を逆風と捉えず、より効率的に太陽光設備を設置するノウハウを磨き、生き残っていく事業者が、基幹電源となる太陽光を担っていくことになる」と述べた。

 「これからの太陽光産業は、単にパネルを並べるだけでなく、適切にメンテナンスを行うことで、FIT買取期間の20年を超え、30年、40年もの発電事業をサポートすることが重要になる。40年後、設備コストは大幅に下がっている。そのときにパネルなどを交換すれば、FITがなくても競争力のある電気を100年間、生み出し続けることも可能になる」と述べ、FIT後を睨んだ太陽光自立への期待感を表明した。

 加えて、「ベストミックスで示した太陽光の導入量(64GW、構成比7%)は、国民負担の観点から決まったもの。買取費用が想定より減らせれば、64GW以上に導入することも可能で、8~10%になることもあり得る」との見解を示した。

 ベストミックスにおける太陽光の導入量(64GW)は、固定価格買取制度(FIT)における太陽光の買取費用の総額をまず2.3兆円と決め、それから逆算して算出した経緯がある。FITの見直しによって、滞留案件の取消が想定以上に進み、FIT初期の案件が、低い買取価格の案件に差し替われば、買取費用の総額が減り、導入量が増やせることになる。

 このほかFITの見直しに関し、「国内の太陽光発電設備の設置コストが、海外に比べ高止まりしている要因は、原価積み上げ型で買取価格を決めてきたことが大きい。制度の見直しによって、こうした点は変えていく必要がある」と述べ、より競争的な事業環境を生み出す方向性を示した。