アイ・エム・エス・ジャパンは2015年10月6日、プレス向けセミナー「医療ビッグデータの活用最前線」を開催。製薬会社におけるリアルワールドデータ(RWD)とスマートフォン(スマホ)連携の測定ツールを使ったモバイルヘルスの最新動向を解説した。講師は、同社コンサルティング&サービス プリンシパルの松井 信智氏が担当した。

 製薬会社が医薬品の効果を検証する「治験」は、限られた人数の患者を対象に一定の条件下で実施される。これに対してRWDは、不特定多数の患者を対象とする実際の診療での医薬品の効果や副作用などの「実世界のデータ」を意味する。

 日本における代表的なRWDには、レセプト情報・特定健診等情報データベース、通称「ナショナルデータベース」や医薬品医療機器総合機構(PMDA)が構築を進めている「MID-NET」のデータがある。

 このうちナショナルデータベースは保険請求のための「医療管理データベース」であり、受診情報の網羅性やデータフォーマットの標準化は申し分ないが、治療効果のような「アウトカム情報」までは記述されていない。受診者のプライバシーを守りながら研究者がレセプト情報にアクセスできるように、2015年4月に東京大学と京都大学に「オンサイトセンター」が設置されたが、データにアクセスできる組織は今のところ、国、自治体、大学、研究開発独立行政法人などの公的研究機関に制限されている。製薬会社が新薬開発のために利用することはできない。

 このほかRWDには電子カルテに代表される「臨床データベース」がある。こちらは診断や治療の効果を含む豊富な情報が記載されているが、医療機関ごとにバラバラに管理されており、情報のフォーマットも統一されていない。このため、患者の治療推移やその効果を一元的に把握することはできず、「データベースとして極めて使いにくい」(松井氏)。

アイ・エム・エス・ジャパン コンサルティング&サービス プリンシパルの松井 信智氏
アイ・エム・エス・ジャパン コンサルティング&サービス プリンシパルの松井 信智氏