「接続可能量」の名称の見直し
「接続可能量」の名称の見直し
(出所:経済産業省)
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「30日等出力制御枠」の見直しの考え方
「30日等出力制御枠」の見直しの考え方
(出所:経済産業省)
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 経済産業省は10月9日、省エネルギー小委員会・系統ワーキンググループ(WG)を開催し、太陽光と風力発電の「接続可能量」について、今後のあり方を検討した。2015年度から「接続可能量」の概念を2つに分けて、呼び名を「毎年度の算定値」と「30日等出力制御枠」に変更する。また、今後、毎年度算定する接続可能量(新名称の「毎年度の算定値」)が増えた場合でも、すでに接続契約の申込量が2014年度の接続可能量(新名称の「30日等出力制御枠」)を超えている地域では、申し込み順に繰り上げない方針を示した。

 「接続可能量」は、接続申し込みの回答保留を受け、2014年10月に系統WGを設置し、需給バランス上、太陽光を最大限受け入れられる容量として算定した経緯がある。2014年度に算定した「接続可能量」を超えた接続契約の申し込み分については、出力抑制の上限(年間30日、新ルールで360時間)がなくなり、無制限・無補償の出力抑制を条件に接続することになった。

 ただ、電力系統に受け入れられる太陽光の最大容量は、各電力会社の電源構成や電力需要の想定で変化する。電力需要が大きいほど、太陽光の電力を利用できる容量も大きくなる。また、太陽光より優先的な給電が認められている原子力の設備容量が減れば、太陽光を受け入れられる容量が増える。電力需要の想定は前の年度の実績を使い、電源構成は、電力会社が火力の廃止や原子力の廃炉を決めた時点で、想定から外す。

 経産省が、今回、「接続可能量」を2つの呼び名に分けたのは、2015年度以降、毎年度の算定結果によって、太陽光の最大受け入れ容量が増減する一方、必ずしもそれに連動して、出力抑制の上限設定のある接続申し込み量を増減させないことを想定している。例えば、九州電力の接続可能量は2014年度に817万kWとなったが、2015年度の算定量は需要想定や電源構成の変化で変わる可能性があり、この値を「2015年度算定値」と呼ぶ。そして、仮にこれが900万kWに増えたとしても、九電管内で出力抑制の上限を持つ接続契約の容量は817万kWのままとし、これを「30日等出力制御枠」と呼ぶことにした。

 「毎年度の算定値」が増えた場合、接続契約の申し込み量が「30日等出力制御枠」に達していない電力会社管内では、同枠を増やす可能性がある。一方、接続契約申し込み量が同枠を超えている電力会社管内で、同枠を増やした場合、2014年度時点で無制限・無補償の条件だった案件のなかで、申し込みの早かった順に「30日等出力制御枠」に繰り上がることになる。今回の事務局(経産省)の提案では、「30日等出力制御枠」は増やさず、同枠への”繰り上げ”は実施しない。「算定値の増加分は、無制限・無補償の案件全体の出力抑制を減らすことに活用して、出力制御に上限のある事業者との平等性を高めたい」としている。

 九州電力と北海道電力、東北電力の3社管内では、すでに接続契約申し込み量が、2014年度の接続可能量(30日等出力制御枠)を超えており、今後、原子力の廃炉などで「毎年度の算定値」が増えても、「30日等出力制限枠」は増やさず、無制限・無補償から同枠への繰り上げはない。一方、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の4社管内では、今年7月末現在、接続契約申し込み量が同枠を下回っているため、今後、電源構成の変化で「毎年度の算定値」が増えた場合、「30日等出力制限枠」を増やす可能性がある。また、東京電力と中部電力、関西電力については、系統規模が大きく、まだ太陽光の受け入れ余地が大きいことから、「毎年度の算定値」を算出していないが、今後の太陽光の普及状況によっては、「算定値」を出し、「30日等出力制限枠」を設定する可能性もある。

 経産省では、今後の系統WGで、「2015年度算定値」を公表し、それをベースにした出力抑制の見通し(実績ベースと2シグマ方式)を公表するとしている。

 2014年度に接続可能量を算定した際、原子力の想定には「東日本大震災前の30年間における稼働数と設備利用率の平均」を使っていた。今後、廃炉が決まっていくと、「毎年度の算定値」は増えていくことが予想される。九電や北海道電力、東北電力の管内では、「30日等出力制御枠」は増えないものの、無制限・無補償を条件にした案件に対する出力抑制量が減っていくはずで、毎年度に公表される「出力抑制の見通し」で、その予測値が定量的に把握できることになる。