米国の「Industrial Internet」やドイツの「Industry 4.0」などIoTを基にした情報連携による新しい製造業を目指す動きが勢いを増している。日本でもこれら「スマート工場」の実現に向けた動きが始まっている。

 2015年9月30日に開催された「FACTORY 2015 Fall」(主催:日経ものづくり、日経テクノロジーオンライン)では、「日米独のキーパーソンが語るスマート工場の展望」と題した基調講演に日本、米国、ドイツからこの分野を代表するキーパーソンが登壇。それぞれの現状と展望、課題などを語った。パネリストは、コマツ 執行役員 生産本部 生産技術開発センタ所長の栗山和也氏、米Industrial Internet Consortium(IIC) Chief Technical Officer(CTO)のStephen Mellor氏、独Siemens社 Digital Factory Division, Head of StrategyのHans Rauner氏である(モデレーターは、『日経ものづくり』『日経テクノロジーオンライン』編集部の高野敦)。

日、米、独のキーパーソンが登壇したパネルディスカッション
日、米、独のキーパーソンが登壇したパネルディスカッション
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ICTで工程ごとに生産性を改善する

 コマツの栗山氏は、同社が進める「つながる工場」について語った。同社が、「Manufacturing Innovation by Save & ICT」をコンセプトに目指しているのは、「ICTで生産から販売まで全ての工程が見えること」。実際、製品面ではKOMTRAXなどで製品の情報がコマツに届く環境が整っている。製造面でも「KOM-MICS」という活動を展開している。ICTで生産の各工程の生産性を改善しようというものだ。狙いは、とにかくスループットを上げること。特に加工情報が重要になるという。

 ただし、多くの既存設備を活用して生産性をどう高めるが課題。モノとサービスを見える化し、情報を企業間で自動化自律化して生産することを狙っている。そこで活用しているのが3Dデータという。設計情報を使って自社開発している溶接ロボットのオフラインティーチングを行うとともに、海外工場で稼働するそれらのロボットの稼働状況を日本で監視している。工作機械もワークのバラつきに応じて最適な素材の形状を計測してワークのバラつきに応じて最適な加工パスを得られるようにした。「3Dデータを得られたことが大きな進歩をもたらした」(同氏)。

コマツ 執行役員 生産本部 生産技術開発センタ所長の栗山和也氏
コマツ 執行役員 生産本部 生産技術開発センタ所長の栗山和也氏
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