開発中のCIGS系太陽電池の層構成の例
開発中のCIGS系太陽電池の層構成の例
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 豊橋技術科学大学と産業技術総合研究所の研究者は、CIGS系太陽電池をアンモニア水溶液に短時間浸すだけで、エネルギー変換効率を6.8%から13.7%へと約2倍に向上させることに成功した。技術的詳細は、太陽光発電技術の学術誌「Progress in Photovoltaics」に論文として掲載した。

 豊橋技術科学大学 教授の伊崎昌伸氏らで構成する研究チームは、CdSに代わるバッファー材料を利用したCuInGaSe(CIGS)系太陽電池を開発している。これまで、CIGS系太陽電池では、CdS以外のバッファー層材料を用いると、変換効率が芳しくないことが多かった。その理由はまだ十分に解明されてはいない。

 今回、伊崎氏らは、バッファー層として亜鉛(Zn)を用いたCIGS系太陽電池を試作。兵庫県のシンクロトロン加速器「SPring-8」を用いて、試作した電池のバッファー層の構造を詳細に解析した。

 その結果、バッファー層は水酸化亜鉛(Zn(OH)2)の層、および酸化亜鉛ZnOや硫化亜鉛ZnSの混合層の2層から成ることが判明したという。このうち、Zn(OH)2層を除去したところ、変換効率が6.8%から13.7%に向上した。その除去の方法が、バッファー層形成後のデバイスをアンモニア水溶液に浸すことだった。

 この結果、伊崎氏らは、バッファー層の構造や組成が変換効率に与える影響がより明確になったとする。具体的には、Zn系のバッファー層で不純物となるZn(OH)2を除去すれば、変換効率が大幅に高まることが分かった。しかも、その除去の手法は容易かつ低いコストであるため、CdSを用いないCIGS系太陽電池が、太陽光発電の主役になる可能性が出てきたという。