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 日経Robotics10月号では、建築会社や設計事務所などの建築側がロボットメーカー側へ歩みよることにより、ロボットの活用の幅が広がることを書いた。一方で、ロボットメーカー側が建築側に歩みよらなければならないこともある。変なホテルの設計を担当した東京大学 生産技術研究所の原裕介氏によると、「ロボットメーカーは、建築側で絶対に設置しなければならないものを考慮せずに開発を進めていることもある」という。

ロボット側も使用環境をもっと考慮すべき

 ポーターロボットを例に挙げよう。ポーターロボットは点字ブロックを通過する時、大きく振動する。それは、ロボットを見守る使用者が少し不安になるほどだ(図8)。同氏によると「変なホテルで最初にポーターロボットを動かした際には、停止センサが点字ブロックに反応し、ロボットが停止してしまうことがあった」という。

 これはロボットが点字ブロック上を通過することを、ロボットメーカーが考慮していなかったためだ。そもそもホテルなどの公共性の高い建物を新築する場合、バリアフリー法やそれに関係する各自治体の条例の対象となる可能性が高い。バリアフリー法は駅や病院など公共性の高い施設で、点字ブロックやスロープなどのバリアフリー設備の設置を定めるものである。公共の施設へロボットを導入しようとしているメーカーは、必ず考慮すべき事項だ。

 「ロボットを自由気ままに動かそうとすると、建築側への負担が大きい」と原氏は語る。例えば、多くの移動ロボットが各階を移動できるようにするためには、各階をつなぐスロープを設置しなければならず、現実的ではない。エレベーターの利用も、現状ではロボットとエレベーターの間で通信が必要になるなどコスト面で負担が大きく、難しいようだ。さらに、稼働する移動ロボットの台数が増え、ロボット同士のすれ違いなどが発生するようになった場合、通路幅の制限などが必要になり、建築側の負担は増す。

図8:点字ブロックを通過中のポーターロボット。通過中はかなり大きく揺れる。曲がるときは写真のように自動車のようなウインカーを出していた(ポーターロボットの向かって左側に見える、白く光る棒状部分)。走行中は警告音の代わりに音楽を流す。進行方向に人や荷物などの障害物があると停止して、警告音声が流れた。
図8:点字ブロックを通過中のポーターロボット。通過中はかなり大きく揺れる。曲がるときは写真のように自動車のようなウインカーを出していた(ポーターロボットの向かって左側に見える、白く光る棒状部分)。走行中は警告音の代わりに音楽を流す。進行方向に人や荷物などの障害物があると停止して、警告音声が流れた。