宮崎大学に設置した集光型太陽光発電システム
宮崎大学に設置した集光型太陽光発電システム
(出所:宮崎大学)
[画像のクリックで拡大表示]
水の電気分解などの実験装置
水の電気分解などの実験装置
(出所:宮崎大学)
[画像のクリックで拡大表示]

 東京大学と宮崎大学は9月18日、両大学の研究者グループが、太陽電池の電力で水を電気分解するシステムを構築し、太陽光エネルギーの24.4%を水素として蓄えることに成功したと発表した。

 今年8月、オーストラリアのグループが、同様の原理で太陽光から水素への変換効率 22.4%を記録したが、今回はこれを上回り、世界トップクラスの効率性を達成した。また、従来の光触媒を用いた太陽光からの水素生成では、エネルギー変換効率は10%以下という。

 宮崎大学工学部の西岡賢祐准教授、太田靖之特任助教、東京大学の杉山正和准教授、藤井克司特任教授らの研究グループの成果。同研究は、応用物理学会の国際論文誌「Applied Physics Express」に2015年9月16日に発表され、スポットライト論文に選ばれていた。

 西岡准教授らは、レンズで集めた強い光で発電する「集光型太陽電池」を用い、水の電気分解装置との電気的接続法を改良することでエネルギー損失を低減、水素へのエネルギー変換効率を向上させた。従来、こうした研究では、擬態太陽光が用いられることが多いが、今回は実際の太陽光のもとで実現した。

 今回の実験では、集光型太陽電池の研究開発拠点となっている宮崎大学に、光学系の設計を改良した住友電気工業製の集光型太陽電池を、THK製の太陽追尾架台に搭載することにより、宮崎の日照条件で発電効率31%を達成した。これに、水の電気分解における電力から水素へのエネルギー伝達効率 80%を考慮すると、太陽光から水素へのエネルギー変換効率は24~25%に達する。

 このシステムに使った太陽電池と電気分解装置はすでに市販されており、現在の技術で実現可能であるという。集光型太陽電池は通常の太陽電池に比べて高価だが、海外の高照度地域では発電効率が高い分発電コストを低減でき、米国エネルギー省が目標とする水素コスト 1kgあたり4ドル以下へ削減も期待できるという。