製造業や社会インフラの領域を中心に、IoT(Internet of Things)の普及が進みつつある。こうした中、日本マイクロソフトがクラウドとIoTを活用したサービスの強化に動き出している。工場内を見える化して作業効率を高めたり、予兆保守などを実現するソリューションである。2015年9月16日に開催された「第3回 ADLINK COM Expressセミナー」の基調講演に、日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長の佐藤久氏が登壇し、同社の製品やサービスを活用した最新のIoTユーザー事例を紹介した。それぞれの事例について見ていこう。

登壇した日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長 佐藤久氏
登壇した日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長 佐藤久氏
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マイクロソフトが明らかにしたIoT導入事例

・牛専用の歩数計で発情期を予測――富士通九州システムズ
 牛に歩数を計測するセンサーを取り付け、遠隔監視し機械学習させることで、発情期が来るタイミングを未来予測できるようになった。牛の発情期は、21日~28日の周期でとくに夜9時~朝5時に訪れることが知られている。これらをモニタリングすることで、適切なタイミングで人工授精を行えるようになり、子牛の生産効率が飛躍的に上がった。それに伴って管理者の負担を軽減できたという。

牛専用の歩数計で発情期を予測する「牛歩システム」
牛専用の歩数計で発情期を予測する「牛歩システム」
(富士通九州システムズ)
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・多品種少量ラインの生産性を30%向上――オムロン
 多品種少量生産のラインにおいて、段取り替えの多発が課題となっていた。そこで、製造装置にセンサーを取り付け、ものの流れを時間軸で可視化することで、生産性が30%向上したという。なお、現場担当者が使い慣れたエクセル(表計算ソフト)で分析・改善ができることの利点も大きかったという。加えて、製造データと品質不良の関連性も同時に発見できるという副次的効果もあった。

・エレベーターの予兆保守に貢献――独ThyssenKrupp社
 エレベーターの稼働状況をリアルタイムに監視することで、遠隔地からでも保守・管理を可能にした。稼働データに通常と異なる異常値が認められると、「何日以内に保守が必要です」というアラートを出す。問題発生時の対処方法のノウハウを機械学習でシステム側に学ばせることで、稼働率が向上したという。急成長する中国市場における保守技術者不足の問題解決に寄与する。