図1:コミュニケーションロボット「PALRO」
図1:コミュニケーションロボット「PALRO」
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 2015年9月15日、「介護ロボットフォーラム2015 」が開催された。同フォーラムは、神奈川県とかながわ福祉サービス振興会が主催する、介護ロボットの説明会。介護施設への導入事例を当事者らが紹介した。

 介護現場ではロボット導入について、強い抵抗があるようだ。富士ソフトが開発したコミュニケーションロボット「PALRO」の介護施設への導入について講演した横浜市福祉サービス協会 新鶴見ホーム 事務長の伊藤尚子氏は「介護スタッフが足りないのに、ロボットの世話までできない。最初はロボット導入に反対した」と語る(図1)。

 介護の現場にロボットを導入するためにはどうすればよいのだろうか。まずは、導入や運用の際に現場に負担を少なくすることだ。

 介護士を始めとして、介護の現場は常に人手不足で、そこで働く人は非常に忙しい。だからこそ、ロボットの導入が期待されている。しかし、現状の介護ロボットは、使い方を覚えたり、ロボット動作を監視したりする必要があるなど、逆に現場の負担を増やすことも多い。ロボットを使用するために現場の負担が増えてしまったのでは、ロボットは受け入れられない。伊藤氏の施設では「PALROの利用や運用は、介護士など現場の人間ではなく、ほぼすべて経理など事務方の人間が担当している」という。

 次に大事なことは、現場への教育だ。伊藤氏は、「導入するロボットについて、使い方やその効果について詳しく教育することが大事。ただロボットを作って持って来ただけでは、便利なロボットでも使えない」という。

 医療法人社団 東華会 事務課長の湯浅亮氏も「現場の人がロボットに触れて、ロボットに慣れると共に、なぜそれが必要なのかを理解することが大事だ」と語る。同時に「ロボットメーカーは、たとえ現場から必要ないと言われても、なぜ必要ないのか、使えるようにするためには何を改良すればよいのかを介護の現場の人間と話し合うことが大切だ」という。

 現場からの抵抗が大きい介護ロボットだが、導入すると効果も出てくる。伊藤氏は「PALROの導入は、介護士がロボットに負けないように自分の介護を見つめ直す良い機会になる」という。現場がロボットにはできない、人にしかできない介護について考えるようになるのだ。

 また「一度、PALROを導入すると現場のロボットへの抵抗感が薄れ、その後、トヨタ自動車の介護ロボットへの開発協力や移乗アシスト機の導入にもつながった」という副次的な効果もあった。