慶應義塾大学は2015年9月16日、同学理工学部の榊原康文教授と医学部の研究グループが静岡大学情報学部の狩野研究室などと共同で、医師国家試験を一部自動解答する人工知能プログラムを日本で初めて開発したと発表した。

 近年、医療・健康データの電子化が急速に進められているが、患者の状態を把握して診療に必要な判断を的確に下す作業は難易度が高く、専門性が要求される。このため、電子カルテなどに記録された内容から患者の情報を正しく読み取り、医師の診療を支援するシステムの構築が期待されているという。

 医師国家試験を解答する人工知能プログラムは、そうしたシステムの構築を最終目的とする先行研究として開発された。医師国家試験問題は、問題文に患者の情報や検査結果を提示した上で、選択肢から適切な答を選ぶ臨床実地問題形式のものが大半を占める。今回はこのタイプの問題を解答するプログラムの開発を目指した。

 開発した人工知能プログラムを用いて、第107回(平成25年度)、第108回(平成26年度)の医師国家試験問題のうち、臨床実地問題形式の27題について解答したところ、正答率は42.6%とランダムに解答して得られる正答率19.6%より高い正答率を記録した。医師国家試験の合格判定基準は約60%程度と言われている。正解を導くための教師データを大量に準備することができれば、2~3年以内には医師国家試験に合格できるプログラムができる見込みだという。