PLRの概要イメージ
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PLRによるデータの個人管理と共有・活用のイメージ
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PLRに基づく地域包括ケアのイメージ
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 東京大学大学院情報理工学系研究科附属ソーシャルICT研究センターの橋田浩一教授は2015年9月3日、山梨県の恵信福祉会との共同研究で、介護付き有料老人ホームの入居者の介護記録データをその家族が管理して他者と共有できる体制を構築したことを発表した。「PLR(個人生活録:personal life repository)」に基づいて構築されており、2015年8月14日より試験運用を実施しているという。

 B2C(business to consumer)サービスでは通常、医療記録や介護記録、購買履歴などの個人情報を、サービス事業者などが顧客データとして集中管理する。しかしこの方法には、情報漏洩のリスクや管理コストが大きいだけでなく、個人が自分のためにデータを活用できないなどの問題がある。

 PLRは、個人が自身のデータを蓄積・管理し、他者と安全に共有するための仕組みである「分散PDS(decentralized personal data store)」の一種。今回の体制は、個人が自分(や家族)の介護記録などのデータを自ら電子的に管理し、事業者などと共有して運用する世界初の仕組みになるという。本人や家族に加えて、他者(親類縁者、医療機関、他の介護施設、配食事業者、自治体、成年後見人など)とデータを共有して活用できるメリットがある。

 PLRでは個人端末用のアプリケーションを利用し、個人(または代理人)が本人のデータを暗号化してGoogle DriveやDropboxなどのパブリッククラウドに格納。これを家族や友人、事業者と共有して活用する。アプリケーションは、アセンブローグがAndroidアプリとして実装。PLRに基づく介護記録アプリとして、恵信福祉会の3つの介護施設で70人以上の入居者の介護記録作成に使われており、介護業務の効率向上に役立っている。

 医療制度改革や地域包括ケアの実現においては、従来の集中管理型サービスが直接相互連携することは一般に不可能とされている。一方PLRのような仕組みは、個人の仲介により事業者同士を間接的に連携させることができる。

 そこで橋田教授は恵信福祉会および恵信会と連携し、恵信会が山梨県内で運営する療養型病院での記録作成などにもPLRを適用。病院と介護施設とが個人を介してデータ共有し、効率的な地域包括ケアシステムを実現する取り組みも進めている。社内外のSNSや営業支援ツールなど、企業向けのアプリケーションにも、PLRは応用される見込みだ。