[画像のクリックで拡大表示]

 工学院大学 学長で先進工学部・応用物理学科 教授の佐藤光史氏の研究室は、光充電機能を持つ半透明のLiイオン2次電池を試作し、開催中の展示会「イノベーションジャパン2015」に出展した。ほぼ透明な窓がそのまま大面積の蓄電池となり、しかも太陽電池としての機能を持つことで太陽光が入射すると、色がついて光透過率が下がるといった「スマートウィンドウ」の実現を目指しているという。

 佐藤氏の研究室は2013年に、半透明なLiイオン2次電池を開発し、論文に発表している。

 この電池は正極にLi3Fe2(PO4)3 (LFP)、負極にLi4Ti5O12(LTO)、および六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を主成分とする電解液を用いている。これらはLiイオン2次電池として一般的な材料だが、酸化物は基本的に透明である上、正極が80nm厚、負極が90nm厚と非常に薄いことで高い光透過率を実現した。

 波長が約550nmの緑色光に対する光透過率は放電後で約60%。充電後は電極におけるLiの濃度が変わり、材料の電子状態(価数)が変化することで同約30%まで低下する。

 出力電圧は約3.6V。充放電のサイクル寿命は20回までは確認したとする。

 佐藤氏らは今回、まだ論文に未発表の新しいデバイスを出展した。上述の半透明のLiイオン2次電池の材料をやや変更し、負極に入射した光で励起された電子をそのまま電池の充電に使えるようにしたとする。

 出展では、10mW/cm2という太陽光の約1/10のエネルギーの近紫外線を照射することによる光充電と放電を計5回繰り返す実験の結果を示している。