前回(2015年10月号)は、「SSRイノベーション・マネジメント・スパイラルプロセス」(以下、SSRマネジメント)の最初のステップである「Stretch(背伸びした目標の設定)」において、社会や顧客に貢献したいという気持ちが基盤となると説明した。この気持ちが部員の背伸びした目標への挑戦を支えるのである。今回は、Stretchを実践するうえで大事なもう1つのこととして、現場でのマネジャーと部員のコミュニケーションについて紹介する(図1)。

図1 イノベーションの設計図 組織の設計編
図1 イノベーションの設計図 組織の設計編
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Whyに基づくコミュニケーション

 部員とのコミュニケーションの基本は「Why(なぜやるか)→How(どのようにやるか)→What(何をやるか)」を共有することだ。特にWhyの共有が重要になる。この考え方は、Simon Sinek氏が「ゴールデンサークル」として提唱しているものである1)

 筆者の経験からも、部員が納得していないような素振りを見せるとき、目標のハードルの高さよりもWhyの共有が不十分であることが多い。例えば、製品の在庫回転率*1を向上させるプロジェクトを技術者の部員に担当させたことがある。この部員からは当初、熱意があまり感じられなかった。

*1 在庫回転率
効率性を示す指標で、在庫回転率=売上高(もしくは売上原価)÷棚卸資産額で表される。在庫回転率が高いことは、在庫としてとどまっている時間が短いことを意味し、効率に優れる。