本連載の第6回(2015年7月号)から第16回(2016年5月号)まで、イノベーションの設計図の中の「イノベーションを創出させるマネジメント」の詳細を紹介してきた。基本的な考え方は次のようなものだ。

・イノベーションのような創造的な仕事は、決してマニュアル化できない。

・それ故、成功の確率を高めるためには、イノベーションの担い手である部員のやる気を引き出し、彼らの頭の中(脳)を活性化するしかない。

 その具体的な方法が、「Stretch(背伸びした目標の設定)」「Support(精神面を含めたさまざまな支援)」「Reward(正当な評価と報酬)」という3つのステップを繰り返し、部員の能力向上を図っていくマネジメントである。筆者は3つのステップの頭文字を取って「SSRイノベーション・マネジメント・スパイラルプロセス」(SSRマネジメント)と呼んでいる。

 今回はまず、SSRマネジメントの中のRewardに関するマネジメントの1つとして、「自主的な協力の行動を昇進プロセスに結びつけるマネジメント」を紹介する(図1)。これにより、「イノベーションを創出させるマネジメント」を構成する10項目の説明を一通り終えることになる。

図1 イノベーションの設計図 組織の設計編
図1 イノベーションの設計図 組織の設計編
Rewardのステップでは、「イノベーションを創出させるマネジメント」の8~10が重要になる。今回は、その中の「10自主的な協力の行動を昇進プロセスに結びつけるマネジメント」を紹介する。
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 そして最後に、イノベーションを実践する際に、会社からの積極的な支援が望めない場合の気構えに触れたい。イノベーションを担う部署はかなり疲弊し、不満を募らせているようだ。筆者が講演などで話した時に、「会社としてイノベーションを支援する仕組みがない」「部員に新しいことに挑戦しようという気概が乏しい」と嘆くマネジャーが多いことに気付いた。ここでは、「そんな状況をいかに打破すればよいのか」がテーマになる。