「やらなければならない仕事が山積み。とても創造的な仕事に取り組む時間的な余裕なんてない」。みなさんもこんな状況ではないだろうか。今回は「Support(精神面を含めたさまざまな支援)」の1つとして、こうした状況を打破し、部員が創造的な仕事に取り組める時間をつくり出すためのマネジメントをテーマにする。

 具体的な内容は、図1に示した3つのステップである。すなわち、「すべきことを洗い出して優先順位をつける(ステップⅠ)」、それぞれについて「Stop(中止)、Keep(継続)、Modify(修正)、Change(創出)を判断し、これを基に優先順位を見直す(ステップⅡ)」、「ModifyもしくはChangeの場合は、何を(What)、誰が(Who)、いつまでに(By When)を決定する(ステップⅢ)」である。

図1 「創造のための時間」をつくる3つのステップ
図1 「創造のための時間」をつくる3つのステップ
実務面では、いかにしてこのステップを実行するかが課題となる。今回は、この3つのステップを実施するためにマネジャーがすべきことを紹介する。
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 これらは、当たり前に見えるかもしれないが、「言うは易く行うは難(かた)し」といえる。だから実務面では、いかにしてこのステップを実行するかが課題となる。そこで重要となるのが、「Whyを繰り返し、論理的に考え抜かせる」「(マネジャーは)機会は示すが、実行は(部員)自ら決断させる」という2つのマネジメント手法だ(図2)。

図2 イノベーションの設計図 組織の設計編
図2 イノベーションの設計図 組織の設計編
Supportのステップでは、「イノベーションを創出させるマネジメント」の2~7が重要になる。今回は、その中の「Whyを繰り返し、論理的に考え抜かせるマネジメント」と「機会は示すが、実行は自ら決断させるマネジメント」を紹介する。
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 Whyを繰り返す分析手法としては、トヨタ自動車の「なぜなぜ分析」が広く知られているが、3Mも独自の分析手法を構築している*1。この手法を活用すれば、根本原因を論理的に突き止めることに役立てられる。一方、判断や決定を部員に任せるマネジメントは、プロジェクトに対する部員の思いを強くすることにつながる。単に上司から「やれと言われた仕事」ではなく、「このプロジェクトは自分の仕事だ。成功させるのは自分しかいない」という思いが湧いてくるからだ(第6回2015年7月号も参照)。

*1 3MのWhyを繰り返す分析手法では、下記の3点に留意した活動を行っている。[1]Whyの視点を個人ではなくプロセスに向けて問題の根本原因を遡及する。[2]根本原因の是正処置後、変更したプロセスが正しく機能しているかを測る評価指標を定期的にモニターし、変更の有効性を確認する。有効性が不十分の場合は、根本原因の遡及に戻って検証する。[3]問題が発生した事象だけでなく、同様なプロセスの課題を持つリスクのある事象に対しても変更処置を行い、予防活動として展開する。