ヤマハ発動機は、ヤマハと共同で工場の遠隔管理システムを開発する。ロボットなど生産設備の稼働状況やカメラの映像に基づいた、遠隔地からの監視やメンテナンスが可能になるという。管理用アプリケーションソフトウエアやネットワーク機器などを組み合わせたパッケージとして、2018年度中の発売を目指す。

工場と管理拠点をVPNで接続

 このシステムでは、工場と管理拠点をインターネットVPN(Virtual Private Network)で接続し、セキュアなネットワーク環境での遠隔管理を実現する(図1)。インターネットVPNは、インターネット上に暗号化された通信経路を設けることで、遠隔の拠点同士をつなげる仮想的なLANを構築する仕組みである。

図1 工場遠隔管理システムの概要
図1 工場遠隔管理システムの概要
工場と管理拠点をインターネットVPNで接続し、仮想的なLANを構築。生産設備の稼働状況や映像などに基づいて、監視やメンテナンスなどを実施するほか、トレーサビリティーの確保なども可能になるという。(ヤマハ発動機の資料を基に本誌作成)
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 管理用アプリケーションの開発や生産設備との連携などについてはヤマハ発動機、VPN接続用ルーター(ゲートウエー)やネットワークの健全性を担保するシステムなどについてはヤマハが手掛ける。もともとは1つの会社だった両社だが、製品の共同開発は「初めての試み」(両社)だという

* 1955年にヤマハの2輪車事業部門が独立してヤマハ発動機が誕生した。

 管理対象として主に想定しているのは、ヤマハ発動機が2016年12月に発売し、2017年4月に提供を開始した統合制御ロボットシステム「Advanced Robotics Automation Platform」である(図2)1)。パッケージとしては他社製も含むさまざまな生産設備に対応させる予定だが、同ロボットシステムとの組み合わせでは「ロボットコントローラーとルーターをつなげるだけでVPN接続を確立できるようにするなど、利便性の大幅な向上を検討している」(ヤマハ発動機IM事業部FA統括部統括部長の村松啓且氏)。

図2 Advanced Robotics Automation Platform
図2 Advanced Robotics Automation Platform
水平多関節ロボットや単軸ロボット、リニアコンベヤーモジュール、カメラなどを統合的に制御できる。 (出所:ヤマハ発動機)
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 近年、生産設備メーカーがIoTプラットフォームと呼ばれる工場向けシステムを次々と打ち出している。その多くは、多様な目的に使える汎用性を売りにしている。そんな中、ヤマハ発動機が遠隔管理に照準を合わせたのは、工場の現場で品質管理やメンテナンスをこなせる熟練技能者が不足しており、遠隔管理のニーズが高まると判断したからである。「今は熟練技能者が複数の現場を掛け持ちしてしのいでいるが、いずれ限界が来る」(村松氏)。

 その兆候は既に現れている。例えば、これまではユーザー企業の生産技術部門がロボット自動化ラインの新設やメンテナンスを自前でこなすことが多かったが、最近はヤマハ発動機やそのパートナーのシステムインテグレーターに委託するケースが増えているという。そこで同社としては、遠隔管理という明白なニーズに狙いを絞って、顧客の取り込みを図る。