「タイはASEAN(東南アジア諸国連合)におけるものづくりのハブとなることを目指したい。そのためには、生産性向上と並んで研究開発力の強化が不可欠」。日経BP社と海外産業人材協会(HIDA)らがタイ・バンコクにおいて2015年10月に開催した「アジアものづくりカンファレンス」で、タイ政府高官などの講演者が、研究開発を重視するタイの方針について講演した(図1)。

図1 タイ・バンコクでの「アジアものづくりカンファレンス」
図1 タイ・バンコクでの「アジアものづくりカンファレンス」
300人弱が参加して満員だった(2015年10月21日)。
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相次ぎ施策を打ち出すタイ政府機関

 タイの国内総生産(GDP)の40%は製造業が占める。1980~90年代には飛躍的成長を遂げたが、その後の15年は踊り場に差し掛かり、ASEAN地域の他国との競争が激しくなっている。「生産性向上や研究開発強化のプロジェクトを進めてきたが、対象は大企業に限られていた。今後、タイ国内の10万社の中小企業、200万社に及ぶ零細企業の生産性を上げ、さらにこれらの企業においてもイノベーションを実現する必要がある」(講演したタイ工業省次官のUdom Wongviwatchai氏、図2)。

図2 タイ工業省次官のUdom Wongviwatchai氏
図2 タイ工業省次官のUdom Wongviwatchai氏
「ASEANにおけるものづくりのハブになる」と語った。
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 研究開発力の強化のため、「研究開発費用の3倍の金額を控除できる優遇税制、研究設備や測定装置の整備、研究者の育成などを進める」(同)。タイのGDPに占める研究開発費用の割合は0.5%まで増えてきており、それも以前はほとんどが公的機関によるものだったところが、最近は民間企業によるものが半分程度になっているという。