米Siemens PLM Software社は、ものづくりに携わるスタートアップ企業向けの優遇プログラム「Solid Edge for Startups」を開始する。資本金100万米ドル以内、年間売上高1000万ドル以内で設立3年以内の企業に対し、1年間無償で3D-CAD「Solid Edge」を提供するというもの。さらに、同社はSolid Edgeの機能についても、無償で利用可能なデータ管理機能、手軽に使える流体解析機能など、中小規模のユーザーを意識した強化を図っている。

* Siemens PLM Software社が主催した「Solid Edge University」(2016年10月25~27日、米インディアナ州インディアナポリス)において公表した。

技術者1人に1台提供

図1 米Local Motors社Chief Strategy OfficerのJustin Fishkin氏
図1 米Local Motors社Chief Strategy OfficerのJustin Fishkin氏
「大手自動車メーカーに比べて、はるかに多くの人のアイデアを集める」と述べた。
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 Solid Edgeのユーザーは中小規模の企業が多いといわれる。発足して間もないスタートアップ企業での利用にも向くと考えられ、実際Solid Edgeのユーザーの中には新興の有力企業がある。その代表格が3Dプリンターを使った革新的なクルマ造りで知られる米Local Motors社(「挑戦者」参照)だ。Solid Edgeに関するイベント「Solid Edge University」においても基調講演に同社Chief Strategy OfficerのJustin Fishkin氏が登壇した(図1)。

 Fishkin氏は、Local Motors社の特徴として、大手自動車メーカーに比べて開発期間が数分の1、投資額は10分の1以下なのに対し、関わる人の数は10倍以上になることを示し、「さまざまな人のアイデアを取り入れる『Co-Creation』が重要である」と述べた。アイデアを集めるためには、「オープン性を持つことと、成功したアイデアだけでなく失敗したアイデアも尊重することが(企業の基本方針として)重要」(Fishkin氏)と指摘。実際、「失敗したアイデアに対しても対価を支払っている」とした。

 Local Motors社は、新規の開発プロジェクトの立ち上げに当たってアイデアコンテストを実施する。その際に、コンテストの参加者からさまざまな形式のCADデータを受け取る。2011年に3D-CADを導入する際にSolid Edgeを選択したのは、他のCADから取り込んだデータを扱える「Synchronous Technology」を利用可能だったためという。

 前述の優遇プログラムSolid Edge for Startupsでは、条件に適合する企業に在籍する技術者全員に対して1人1シートの「Solid Edge Premium」の利用を許諾する。Siemens PLM Software社は、同プログラムに参加したスタートアップ企業が成功を収め、そのままSolid Edgeの有償ユーザーになることを期待していると考えられる。