燃費競争の手段で終わらせない――。エンジンにモーターや電池を組み合わせるハイブ リッド車(HEV)。燃費低減やCO2削減に向けた技術だが、高級車を中心に付加価値の提供手段としての期待が高まってきた。

 2017年3月にスイス・ジュネーブで開催された「ジュネーブモーターショー2017」では、トヨタ自動車の「レクサス」だけでなく、ドイツのAudi社とDaimler社が“走れるHEV”を標榜する車両を初披露した。

新ハイブリッド機構で勝負するレクサス

 トヨタ自動車が今回発表したのは、大型セダンのHEV「レクサスLS500h」だ(図1)。LSシリーズの全面改良は実に11年ぶり。新開発のハイブリッド機構「マルチステージハイブリッドシステム」を採用したのが特徴である。

図1 トヨタが旗艦セダン「レクサスLS500h」を発表
図1 トヨタが旗艦セダン「レクサスLS500h」を発表
(a)クーペに近いデザインに仕上げた。(b)2個のモーターと4速ATを組み合わせたハイブリッド機構を採用した。排気量が3. 5LのV型6気筒ガソリンエンジンと組み合わせる。
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 「高級車では優れた加速性能が必須要件。『より鋭く、より優雅に』をキーワードに開発を進めた」。こう語るのは、LS500hの開発責任者を務めたトヨタ自動車 Lexus International製品企画 チーフエンジニアの旭利夫氏である。走りで物足りないと言われてきたレクサスのHEV。欧州の高級車メーカーと戦う武器として、
新しいハイブリッド機構の導入を決めた

* マルチステージハイブリッドシステムはLS 500hに先行して、2017年3月16日に発売した新型クーペ「レクサスLC500h」でも採用している。

 新しいハイブリッド機構は、2個のモーターと4速自動変速機(AT)を組み合わせることで、発進時を中心に加速性能を高めた。旭氏は「アクセルレスポンスの良い走りに仕上がった」と自信をのぞかせる。

 先代のHEV「LS600h」などに搭載する従来のハイブリッド機構では、発進時における低速域でエンジンは最高回転に達しない。今回、ハイブリッド機構の出力軸に4速ATをつなげたことで、変速比幅を広げてギア比を大きくできた。これによって低速域で駆動モーターの回転数を上げられ、それに合わせてエンジンを最高回転数まで高められる。

 LS500hは排気量が3.5LでV型6気筒のガソリンエンジンを備え、最高出力は220kW、最大トルクは350N・m。エンジンとモーターを合わせたシステム全体の最高出力は264kWである。電池は後席と荷室の間に配置した。