FAの世界で、標準的な技術を取り入れて接続性や相互運用性を高める「オープン化」の動きが進んでいる。その震源地は、インダストリー4.0を推進するドイツだ。2017年11月下旬に同国・ニュルンベルクで開催されたFAシステムの展示会「SPS IPC Drives 2017」では、生産ラインを構成するコントローラーやネットワークでオープン化の提案が目立っていた。
ドイツをはじめとする欧州では、特定のベンダー企業による囲い込みを避けるために、ユーザー企業は標準的な技術を志向する傾向が強いといわれる。インダストリー4.0に代表されるデジタル化によって、FAの世界でITの重要性が高まり、オープン化がさらに加速している。この動きは欧州企業にとどまらず、世界中に工場を展開する日本のユーザー企業や、それらの企業を顧客に持つFAメーカーにとっても大きな影響を与えそうだ。
多様な言語でプログラミング
コントローラーの分野でオープン化に積極的なのは、ドイツPhoenix Contact社だ。同社は、「次世代オープン・コントロール・プラットフォーム」と位置付ける「PLCnext Technology」の第1弾製品として、PLC「AXC F 2152」と統合開発環境「PC Worx Engineer 7」の提供を開始した(図1)。今後は、周辺機器や拡張機能などを順次追加していく。
「6カ月に及ぶ『アーリーアダプターフェーズ』を経て、ついに市場に投入する時が来た」。展示会場の報道機関向け説明会に登壇した同社CTO(最高技術責任者)のRoland Bent氏は、PLCnext Technologyの製品化を高らかに宣言した。同氏は2016年の同展示会で「1年後にリリースする」と語っていたので、その“公約”を守ったことになる。
PLCnext Technologyの特徴は、多様な言語で制御プログラムを作成できることだ。具体的には、ラダーダイアグラム(LD)やファンクション・ブロック・ダイアグラム(FBD)といった国際標準「IEC 61131-3」で定義されている5種類のPLCプログラミング言語*、C/C++やPythonといったIT業界を中心に広く普及しているプログラミング言語、そしてモデルベース開発に適した「MATLAB/Simulink」のブロック線図などだ(図2)。
* LDとFBDの他に、インストラクションリスト(IL)、ストラクチャードテキスト(ST)、シーケンシャル・ファンクション・チャート(SFC)がある。