「日経ものづくり」2017年11月号のニュースの深層「神戸製鋼、品質データ偽装の連鎖、調査は継続、組織ぐるみの隠蔽も」を先行公開した記事です。

 拡大する製品の品質データ偽装の実態に、神戸製鋼所に対する信頼が今、大きく揺らいでいる。現時点で明らかになっている不適切な製品(品質データを偽装していた製品)は、売上高ベースで約4%。不適切な製品の出荷先は約500社に上る─。2017年10月13日に都内のホテルで開かれた記者会見で、神戸製鋼は自社製品の品質データの偽装についてこう説明した(図1)。

図1 品質データを偽装した製品を500社に出荷
図1 品質データを偽装した製品を500社に出荷
10月13日に都内で開かれた会見の様子。神戸製鋼所は、検査証明書の品質データを偽装した製品を約500社に出荷したことを明らかにした。 (写真:尾関裕士)
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検査証明書のデータを書き換え

 神戸製鋼が自社製品のデータ偽装について初めて発表したのは10月8日だ。都内で開いた会見で、顧客との間で取り交わした製品仕様に適合していない一部の製品について、検査証明書のデータの書き換えなどを行ったうえで、仕様に適合するものとして出荷していた事実を公表した。データを偽装していた製品はアルミニウム合金の板や押し出し品が約1万9300t、銅製品の板条*1や管が約2200t、アルミ鋳鍛造品が約1万9400個*2。これらの不適合製品を出荷していた取引先の企業は約200社に及ぶことを明らかにした。

*1 JISの伸銅品用語では、板とは平板で供給される圧延製品、条とはコイル形状で供給される圧延製品。いずれも、0.1mm以上の均一な肉厚で長方形断面を持つ。

*2 2017年10月8日に公表した銅管に関する案件のうち、コベルコマテリアル銅管(KMCT)が製造した「銅および銅合金の継目無管(JIS H 3300)」について、JISの認証機関である日本品質保証機構(JQA)による審査を受け、KMCT秦野工場の品質マネジメントに問題があるとの指摘を受けたこと、当該製品のJISマークの表示と出荷を自粛していることを2017年10月20日に発表している。当該製品の2016年9月~2017年8月における出荷量は25t、顧客数は4社である。

 不適合製品を出荷した企業への対処としては、偽装の事実を連絡するとともに、不適合製品を使用した顧客の製品に対する安全性に関して、顧客と共同で技術的検証を実施していると述べた。

 また、事実関係の調査体制についても説明した。データ偽装の実態について調査を開始しており、社内には同社会長兼社長の川崎博也氏を委員長とする品質問題調査委員会を設置。加えて外部の法律事務所が、第三者の立場から調査を進めていることを報告した*3

*3 2017年10月20日、神戸製鋼は品質自主点検を行う中で、長府製造所の押出工場において管理職を含む従業員による妨害行為(意図的な報告漏れ)があったことが判明したと公表した。これに伴い、同社は品質問題調査委員会に代えて、複数の外部委員のみで構成される外部調査委員会を設置する方針を決めた。