自動運転で脚光を浴びる人工知能(AI)コンピューティングを実現する半導体メーカーが産業用ロボットの巨人と手を組んだ。2016年10月5日、米半導体メーカーのNVIDIA社は、ファナックと提携することを発表した(図1)。

図1 NVIDIAのJen-Hsun Huang氏
図1 NVIDIAのJen-Hsun Huang氏
ファナックと組んで産業用ロボットへのAI半導体の搭載を加速させようとする。
[画像のクリックで拡大表示]

 ファナックの製造業向けIoT(Internet of Things)プラットフォーム「FANUC Intelligent Edge Link and Drive system(以下FIELDシステム)」におけるAIの実装に関して両社は協業する。

 ファナックはFIELDシステムにおいて、AIを使ってロボットや工作機械を賢くし、さらにそれらをつないで連携させることで製造業の生産性を高めようとしている。NVIDIA社は、このAIコンピューティングを実現する半導体部品をファナックに提供する。

図2 ファナックのバラ積みロボット
図2 ファナックのバラ積みロボット
ティーチング(教示)なしに、深層学習でワークの取り出し方を自己学習する。
[画像のクリックで拡大表示]

 NVIDIA社はGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)の大手メーカー。GPUはもともとゲームなどのコンピューターグラフィックス(CG)向けに使われていたが、大量の画像などのデータを読み込んで認識するディープラーニング(深層学習)に適していることからAIの“頭脳”として注目を集めるようになった。

* GPUとはGraphics Processing Unitの略。逐次処理用に最適化された2~4個程度のコアから成るCPU(中央演算処理装置)に対して、GPUは並列処理に適した形で設計された何千もの小さなコアが搭載されている。

 それではAIは製造現場でどのように活用できるのか。既にファナックは事前のティーチング(教示)なしに、AIによる深層学習を用いて自己学習するバラ積みロボットを開発している(図2)。