製造業の高度化に向けて、中国政府が策定した行動計画「中国製造2025」。そこに大きなビジネスチャンスを見いだしているのがドイツSiemens社である。同社が2016年7月に中国・北京で開催したプライベートイベント「Industry Forum Siemens 2016」において、同社の中国法人であるSiemens China社の社長兼CEOを務めるLothar Herrmann氏は、「我々は中国製造2025を積極的に支援する」と力強く宣言した(図1、2)。
中国政府は今後約30年で製造業を高度化する方針を掲げており、2025年までの10年間の行動計画を示した中国製造2025はその最初のステップとなる。加えて、第13次5カ年計画(2016~2020年)でも製造業の高度化は重要な政策として位置付けられている。具体的には、「スピード重視から品質重視への転換」「中国からイノベーションを生み出す」といったテーマを設定している他、ICTやロボティクス、新素材など10の重点分野を挙げている。
そもそも中国政府が中国製造2025を打ち出した背景には、このままでは中国の製造業が競争力を失いかねないという危機意識がある1)。安価で豊富な労働力を武器に「製造大国」の地位を確立した中国だが、近年は人件費の高騰や他産業への人材流出が進み、その前提が崩れてきた。さらに、先進国を中心に進むスマート化の流れに乗り遅れれば、製造大国から転落する可能性さえある。
前出のイベントにおいてHerrmann氏は、中国製造2025の実現にSiemens社の技術やソリューションが効果的であることを訴求した。例えば、ICT分野では同社のソフトウエア開発手法やセキュリティー技術が、ロボティクス分野ではシステムズエンジニアリング手法や自動化技術などが役立つという。
中国製造2025の“主役”である中国企業としては、Siemens社の技術やソリューションを導入することで、先進国企業に一気に追い付ける可能性が出てくる。一方、早くから中国市場に参入して多くの分野で高いシェアを確保しているSiemens社としても、中国製造2025に食い込むことでその地位をさらに強固なものにできるという狙いがある。