カシオ計算機は、カシオタイ(ナコンラチャシマ県)に自動化組み立てラインを構築し、2017年8月に本格稼働を開始した。これまでは全ての組み立て工程に手作業を要する“手組みライン”だったが、その一部工程に自動化装置を導入。もともと18人必要だったところを11人で作業できるようにし、タクトタイムも12秒から7.5秒へ短縮した*1。その結果、1人当たりの生産可能台数が2.6倍に増えている。
*1 カシオ計算機は自動化ラインの所要人数について「11.5人」と公表しているが、このうち0.5人は部品や部材の補給担当者。一方で手組みラインの所要人数は18人と公表しているが、これには補給担当者を含まない。
2000年代初めごろまでは、タイを含む新興国地域には人件費の安さを求めて進出する工場が多かった。そのような地域においても、自動化が本格的に進み始めている。
専用パレットに部品を組み付け
新しい自動化ラインで生産するのは関数電卓(図1)。関数電卓は、アジアで数学や技術関連の教育用途での需要が増加している*2。1990年代からカシオ計算機は関数電卓をもっぱら中国で生産していたが、「1カ国だけに依存することにリスクがある」として、カシオタイの一部(第3工場)に中国と同じ手組みラインを構築し、2014年6月に操業を開始した。この手組みラインは18人が1列に並び、コンベヤー上を流れてくるワークに対してそれぞれが担当工程について作業する単純な構成だった。しかし、タイでの人件費が上昇したのと、需要増により生産能力増強の必要が生じたのを受け、自動化に向けた検討を開始した。
*2 教育カリキュラム自体に教室や試験場への持ち込みを前提とする国が多いという。