悲願の国産ジェット旅客機がいよいよ大空を舞う─。2015年7月末、東京大学・安田講堂で開かれた国産旅客機に関するシンポジウムは、同年秋に予定されている三菱航空機(本社愛知県・豊山町)の小型旅客機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」(図1)の初飛行を控えて、そんな高揚感に包まれていた。

図1 小型ジェット旅客機「MRJ」の機体
図1 小型ジェット旅客機「MRJ」の機体
初飛行に向け、さまざまな試験を繰り返している。
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 「三菱重工業は戦前、ゼロ戦(零式艦上戦闘機)を開発したが、戦後は基本的に米Boeing社などの下請けを続けてきた。しかし、そうした経験を重ねて(完成機を自社で造るための)さまざまな技術を手に入れることができた。(MRJで)日本のGDP(国内総生産)の一翼を担いたい」。三菱航空機の親会社である三菱重工取締役会長の大宮英明氏は、基調講演でこう力をこめて語った(図2)。

図2 三菱重工業取締役会長の大宮英明氏
図2 三菱重工業取締役会長の大宮英明氏
東京大学の安田講堂で開かれたシンポジウムでMRJの開発にかける情熱を語った。
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 経済産業省・産業技術環境局長の片瀬裕文氏も、日本の航空機産業を成長させる上で、MRJの果たす役割は大きいとの期待を表明した。「航空機は非常に部品数が多くて、すそ野が広い産業だ。部品点数は自動車の場合2~3万点だが、MRJは100万点に達する。航空機の技術は先端的で、最初に航空機に採用されてから他分野に広がるものも多い。技術高度化の中核的な役割を担う」(片瀬氏)。