掃除ロボットの先駆けとして日本でもヒットした米iRobot社の「Roomba」。米マサチューセッツ工科大学(MIT)の教員時代に教え子とともにiRobot社を立ち上げたのがRodney Brooks氏だ。ロボット工学の権威として知られる同氏は、iRobot社を退いた今、協働ロボットで人材不足対策に挑もうとしている。

(写真:栗原克己)
(写真:栗原克己)

 iRobot社は、もともと無人惑星探査車(ローバー)の開発を目的として設立しました。ローバーや軍用ロボットなど多くのロボットを開発し、それが後のRoombaの開発へとつながりました。iRobot社は今もRoombaを開発し、中国の工場などで生産も続けています。

 私は2008年にRethink Robotics社を創設しましたが、そのきっかけはRoombaを生産する中国企業とのやり取りにありました。生産量が増えてきた2004~2005年ごろ、中国の工場から「十分な人員を雇用するが難しい」という声をよく聞くようになったことです。

 ちょうどその頃、私はMITで、Acer社やDelta Electronics社、Quanta Computer社といった台湾企業と共同研究を進めていました。彼らのトップも異口同音に「中国本土で労働者を雇うことがどんどん難しくなってきている」と言っていました。そこで気付いたのです。今すぐにではなくても、いずれ中国で深刻な労働者不足が起こると。私が協働ロボットを開発するRethink Robotics社を立ち上げたのは、労働者が不足するとの予測に対応するためだったのです。