インターネットの誕生から約40年が経ち、従来のIPベースによるネットワークを「白紙から」再設計する研究が始まっている。ネットワークの役割を「コンテンツ主体」で考え、「名前」と呼ぶコンテンツの識別子を用いてファイルを伝送する「CCN(Content-Centric Networking)」と呼ばれるアーキテクチャーだ。CCNを研究するKDDI研究所の狙いや、これまでの成果について、試験システムを開発している田上氏が解説する。 (本誌)

写真:Getty Images
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 2020年には1000倍になるとも言われているモバイルトラフィックの増加や、IoT(Internet of Things)、M2M(Machine to Machine)、車対車通信といった新しいユースケースに対応するため、第5世代移動通信システム(5G)の検討が進められている。5Gでは、現在よりも高速、低遅延、高信頼性で多くの端末を収容可能であることが要求条件として挙げられている。このような要件に対応するため、5Gではさまざまな通信方式や周波数を混在させて利用するヘテロジニアス(異種混合)ネットワークになると予想されている。KDDI研究所ではこうしたヘテロジニアスネットワークの到来に備え、「ICN(Information-Centric Networking)/CCN(Content-Centric Networking)」と呼ばれる「コンテンツ主体」の考え方に基づく新たなネットワークアーキテクチャーの研究を進めている。本稿は現状の通信プロトコルの問題点を挙げ、その解決方法として注目されているICN/CCNを紹介するとともに、将来ネットワークにおけるCCNの効果を説明する。また我々がCCNの有効性を検証するために開発した、60GHz帯通信を用いた試験システムについても解説する注1)

注1)本稿の一部には、総務省の電波資源拡大のための研究開発「ミリ波ワイヤレスアクセスネットワークのための周波数高度利用技術の研究開発」の成果を含む。