日立製作所が開発した、電力損失が小さい新しいパワーモジュール「DuSH」の特徴や実現技術などを2回に分けて紹介する後編。前編では、「デュアルサイドゲート構造」と呼ぶ新しいゲート構造を備えた次世代のIGBTや、同IGBTを搭載したDuSHモジュールについて説明した。後編では同モジュールの開発を主導した森氏が、採用を予定する新しい実装技術について解説する。安価で高温特性に優れる焼結Cuを利用した接合技術である。温度サイクル負荷に対する信頼性やパワーサイクル耐量が高い。この焼結Cuの接合技術を適用することで、DuSHモジュールの出力密度をさらに高められる。(本誌)

 前編(2018年1月号)で解説したように、パワーデバイスの「使命」は、低炭素社会の実現に向けてインバーターの普及を促進することにある。そのためには、パワーデバイスのチップの出力電流密度を向上させる必要がある。ただし、同密度を高めると、チップ面積当たりの損失(損失密度)が増えて、チップ温度(接合温度)が上昇するという課題が生じる。

 対策は大きく3つある。(1)新しいパワーデバイス構造でチップの損失密度を下げる、(2)損失密度が増えて接合温度が上昇し高温になっても耐えられるモジュール(パッケージ)技術を開発する、そして(3)モジュールの熱抵抗を下げる、ことである。前編は(1)を中心に、「デュアルサイドゲート」構造のIGBTと、同IGBTを搭載したパワーモジュール「DuSH」について解説した。今回は、(2)と(3)に不可欠な、高温や温度サイクルに耐える日立のチップ実装技術と低抵抗低減技術について述べる10~11)