コマツの「スマートコンストラクション」はドローンなどで施工対象の土地を3次元(3D)データ化して、設計図面との差分を基に工事を支援するサービスだ。土木や建築の現場の業務を、あたかも工場で製品を製造するかのように、半自動化することを目指す。同サービスの技術面を担当する中野氏に開発の経緯や将来展望を聞いた。

中野 一郎(なかの・いちろう)
中野 一郎(なかの・いちろう)
1959年生まれ。1982年、早稲田大学 理工学部電子通信学科を卒業し、コマツに入社。1989年8月、University of California, Santa Barbara 校に留学。2000年4月にエレクトロニクス事業本部 iTRONICS 開発部長、2004年2月に開発本部システム開発センタ要素技術開発グループGM、2009年4月に執行役員 開発本部システム開発センタ所長などを経て、2015年4月より現職。(写真:加藤 康)

――「スマートコンストラクション」が登場するまでの経緯は。

 スマートコンストラクションは、ICT建機をベースとしています。今の建設機械は熟練したオペレーターが使う機械で、ブルドーザーで言えば、土を押して、最終的に地面を何らかの形にならすという仕事です。ならすということは、いわば工場の切削機械と一緒で、設計情報(加工のための外形情報)を取り込んで、設計情報通りに地面を整形するということです。そういう仕事をいわば半自動化できるような機械を(ICT建機として)最初に作り上げたんですね。同じ概念をショベルにも適用しました。

 前提として、世の中がだんだんそう(半自動化に)なりつつあるというのがあった。我々は機械のマニュファクチャラーとしてそういう機械を初めて出したんですが、実は世の中には後付けの装置でそういうことができるものが出始めていて、市場に浸透しつつあるんですね。米国や欧州を中心に、まずブルドーザーから始まって。

 どういうものかというと、ブレードの先にGNSS(Global Navigation Satellite System、全地球航法衛星システム)のアンテナをくっつけるんですね。そうするとブレードの位置が分かるようになる。とってもシンプルな仕掛けで、そこが地球座標系の中でどこにいるかがわかるようになる。それと設計情報を照らし合わせれば、どんだけずれてるよ、というのが分かる。センシング自体は比較的シンプルな仕組みですが、ブレードを動かせるように機械側を改造するため、それなりに複雑なシステムになって値段も上がるんですけれども、そういうものが、何年も前から世の中に出始めているんですね。

 我々は昔から色んなチャレンジをして、自動化や効率を上げることをずっとやってきたんですが、そういう(半自動化の)技術が出てきたところで、我々もそれらを使って機械メーカーとして完全にインテグレートされたものが作れるんじゃないかってことで、2013年にブルドーザーの製品を出して、その1年後にショベルを出したんですね。ブルドーザーはブレードの制御が自動化されるアフターマーケットの製品があったんですけど、ショベルはなかったですね。ただ、ガイダンスの機能だけはあって、作業機の先端がどこにあるから設計情報に対してまだあと50cm離れているとか、そういうのがわかる仕組みはあったんですけど、作業機が自動で動くっていうのは我々が最初ですね。

 基本的に我々は機械のマニュファクチャラーとして競合他社に対して機械を差別化するのが第一義的なミッションとしてあるわけです。競争力のある商品を作ると。それを、(相談役の)坂根(正弘氏)の言葉ではないですけど、ダントツ商品と言っていて、ICT建機がどこ(に位置する)かというと、純粋に考えたらここ(ダントツ商品)なんですね。機械が半自動化されましたと。ここに商品を投入したんです。

 ところが実はもっと奥行き感のあるビジネスの文脈を考えていて、機械を売ってしまっておしまいではなくて、実際に我々の機械が市場でちゃんと動いてるかな、壊れたかなとか、そういうのをきちんと見る仕掛けとして、ご存知のようにKOMTRAXというテレマティクスの仕組みを15年前に入れてるんですよ。これで機械が見えるようになると。