東京女子医科大学の村垣教授らが開発する次世代手術システム「SCOT(Smart Cyber Operating Theater)」は「Medicine 4.0」というコンセプトに基づく。いわば「Industry 4.0」の医療版だ。手術中にMRI画像などを活用できる「インテリジェント手術室」を発展させ、あらゆる医療機器をネットワークにつなぐことを目指す。その先に見据えるのは、医師が不在でも治療が可能になり得る世界である。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

――「SCOT(Smart Cyber Operating Theater)」と呼ぶ次世代手術システムを開発されていますが、その発端は手術中にMRI画像を撮影して利用する取り組み(術中MRI)だったのでしょうか。

 そうですね。それがプロトタイプというか、ある意味一品生産のSCOTだったということですね。

 (我々が治療に取り組んでいるのは)悪性脳腫瘍という神経膠腫で、専門的な名前はグリオーマというのですが、その境界が見た目では分かりにくい。良性脳腫瘍と悪性脳腫瘍があるうち、良性は頭蓋骨の中だけど脳の外にあるので、脳との区別はわりとスムーズなんですね。ところが、悪性は、不整形で境界がないので、どこまで取っていいか見た目ではよく分からない。

 そのときにMRIを使うと完璧ではないですが、境界が画像で出るので、手術中にMRIを見れればできる限り取れるのではと。たまたま欧米でちょうど始まったころで、我々のニーズと一致していたので、術中MRIシステムを導入しようということが基ですね。

 実際には1997~1998年からプロジェクトが始まり、経産省のプロジェクトME連携ラボで基本的なところが出来上がり、工事が1999年ぐらいから始まって、実際に物ができたのが2000年の前です。一番最初の症例を行ったのが2000年の3月ですね。