電子技術者の役割が変質している。人材会社に焦点を当てた前号の記事に続き、大手電機メーカーへの取材をもとに解説する。開発分野によって異なるが、新たな要素技術を生み出したり、既存品の改良版を効率よく開発したりする力よりも、手持ちの技術を素早く組み上げ顧客ニーズに応える力が重視される傾向にある。

 国内の大手電機メーカーが多くの電子技術者に求める資質が変わってきた。重視するのは、顧客の懐に入り込んで事業価値を探り当て、それに素早く応える力だ(図1)。

図1 顧客とともに開発
図1 顧客とともに開発
大手電機メーカーの技術者は、従来のように自社内で技術分野に閉じて設計・開発することは難しくなっている。最終顧客やサービス事業者を巻き込んで開発の方向性を定める事業領域が増えているためだ。
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 しかも、その時に利用する技術は既存のものであることが多い。そのため、要素技術を一から生み出したり斬新な技術を発想したりする力より、既存の技術を生かして短期間に製品化する力が、これからの電子技術者には欠かせなくなる。既存技術を顧客の価値創造に結び付くように編集する力の方が、作り出す力より重視され出したと言える。その結果、専門外の分野でどのような既存技術が世の中にあるのか、そうした技術がどのように進化するのかをこれまで以上に俯瞰する姿勢が求められる。

 以下、大手電機メーカーや車載機器メーカーが電子技術者に求める資質の変化と、人材不足が叫ばれるAI(人工知能)分野での技術者を電機メーカーが有効に確保する対策を紹介する。