サイクルシェアリングが突如、爆発的に中国で普及した。その波は早くも日本を含めた海外に及んでいる。その一方で自転車の放置やデポジットの未返却といった社会問題も引き起こしている。各自転車は電子部品を搭載しており、MediaTek社のように潤う企業が出てきた。

 まるで経済の改革開放前の中国。そう思わせるほど中国の街頭は今、自転車に溢れている。サイクルシェアリング(共享単車(ゴンシャンダンチァ)、Bike-sharing)が2015年末から急に普及したからだ。50社ほどが参入し、ユーザー数は瞬く間に1億人を突破1)。1600万台以上の自転車がサービス投入された。人口2415万人の上海市には150万台(16台/人)、人口919万人の浙江省杭州市には42万台(22台/人)、各業者の自転車が配備された2)

 利用料は、いずれの業者もわずか1人民元(17円)/時間。ユーザーが市中心部で徒歩5分以内に見つけられるよう、大手業者は自転車を配置している。借りたり返したりする手間もわずかだ。サイクルシェアリング大手の中国Mobike(Beijing Mobike Technology、摩拜単車)社が、中国eico design(易酷奧科技)社と開発したスマートフォンアプリでは2~3の手順で完了する(図1)。自転車を漕いで消費したカロリーも表示する。 サービス提供エリアは、もはや中国にとどまらない。中国の事業者は2017年に札幌市、柏市、サンフランシスコ、シアトル、フィレンツェ、ロンドン、マンチェスター、シンガポールなどで続々とサービスを開始(図2)注1)。ダラスなど米国7都市では、中国人が立ち上げた米LimeBike社が自転車を貸し出している。ソフトバンクコマース&サービスは、中国ofo(Beijing Bikelock Technology、北京拜客洛克科技)社と、東京と大阪で2017年9月以降にサービスを始める。

図1 とにかく手軽なMobike
図1 とにかく手軽なMobike
Mobike社のサービスは利用の手間が少ない。自転車の所在は、GPSと2G(GPRS)ネットワークを通じてユーザーに知らされる。ofo社のそれは2Gネットワークのみで把握されるので精度が低い。Mobike社の自転車は電動ロックで、サーバーの指示で動作する。買い物などで自転車を一時離れたいユーザーは、施錠後すぐ予約すれば同じ自転車に乗れる。
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図2 サイクルシェアの例
図2 サイクルシェアの例
中国でサイクルシェアリングを一挙に普及させたMobike(摩拜)社は2017年8月、日本でもサービスを始めた(a)。それ以前に普及した台湾の「YouBike」のような類似サービス(b)と異なり、必ずしもポートに車両を返却しなくてよい。同じユーザー便益を持つ台湾のサービス「oBike」は、ユーザーが乱雑に自転車を放置しがちと指摘されている(c)。((a):モバイク・ジャパン)
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注1)Mobikeの札幌における料金は100円/時間(9月末まで無料)。デポジットは3000円。中国の業者が欧州でも、一般に利用料金を低く設定できるかは不透明。中国製自転車に対するアンチダンピング課税(48.5%)が続いているためだ。

 サイクルシェアリングの各車両は電子部品市場の新フロンティアといえる。電子部品を内蔵し、サーバーによって位置情報を管理されているからだ。ただし、そこには中国ならではの稼ぎ方や問題対処法が存在する。まずサービスの内実から見ていこう。