これまで泥沼の苦境の中にいたルネサス エレクトロニクスに、明るい話題が続いている。足下の業績は極めて好調。2017年第1四半期の売上高は前年同期比5.9%増の1776億円、営業利益は同62%増の255億円となった。将来の売り上げにつながる車載マイコンの商談も順調に伸び、2016年度は9カ月目の段階で前年度の新規商談の金額を超え6500億円を突破したという。主力のマイコン事業は「工場をフル稼働しても需要に追いつかない状態」(社長 兼 CEOの呉 文精氏)。4月に実施した機構改革で世界市場で新規顧客開拓の体制を整えた。4月開催の「Renesas DevCon Japan 2017」も大入り満員で、自動運転や先進運転支援システム向けAI技術を工業用に展開するなど、応用開拓を加速している。

 同社株式の約7割を保有する産業革新機構と母体企業3社(日立製作所、三菱電機、NEC)は、最大24.2%のルネサス株を売り出すと発表。再建のゴールが近いことを印象付けた。今回のテクノ大喜利では、同社の現況と将来展望を議論した(表1)。

表1 「ルネサスの復活は本物か?」をテーマにしたテクノ大喜利の回答
表1 「ルネサスの復活は本物か?」をテーマにしたテクノ大喜利の回答
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総合電機の呪縛が解けた

 ルネサスは、再建に向けた階段を確実に上っている。多くの回答者が、このように評価しているようだ。

 同社の事業をウォッチし続けている、いち半導体産業OB氏は、「これまで病人だったルネサスが、『事業の選択と集中』『経営資源の適正配分』『提案型営業へのシフト』といった、企業として当たり前のことをようやくできるようになった」とした。同社の前身は総合電機メーカーの部品部門で、親会社の身の丈を超える投資や、親会社と利益相反する事業はできなかった。その呪縛が、ようやく解けてきたといえそうだ。

 特に、高度な半導体技術を盛り込んだシステムソリューションを、顧客企業に提案できるようになった点を評価する声が多かった。「2010年代に入って以降、システムのプラットフォーム化で市場支配力を高める競合と市場を争う機会が増えた。そこでソリューション提案力を磨く取り組みが、実を結び始めたのでは」(テカナリエの清水洋治氏)。