2017年4月1日に分社化されたNANDフラッシュメモリー事業専業の新会社「東芝メモリ」の売却先選びが佳境に入ってきた。東芝は株式の過半を売却する予定であり、同社の名称は(仮)をつけて呼んだ方がよい状態である。東芝メモリの事業は、競合企業やユーザー企業などにとって紛れもない優良事業。ところが、ここ数年は、潤沢な投資余力がなく爪に火を灯すような事業運営を余儀なくされてきた。外部資本を導入することで、ポテンシャルが一気に解き放たれる可能性もある。

 今回のテクノ大喜利では、東芝メモリと同社のユーザー、サプライヤーにとっての理想的な売却シナリオを論じていただいた(表1)。

表1 「どうなる、東芝メモリ(仮)」をテーマにしたテクノ大喜利での回答
表1 「どうなる、東芝メモリ(仮)」をテーマにしたテクノ大喜利での回答
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 そもそも外部資本の導入は、東芝メモリにとってよいことか。東芝のメモリー事業に詳しい、いち半導体業界OB氏は「東芝のメモリー事業の最大の敵は、事業の意思決定を歪ませ、遅らせてきた原発事業出身の経営者。この重いくびきから脱することができれば、経営の意思決定が大幅に改善するだろう」とした。

 メモリー事業での技術開発と経営の両面で経験豊富な慶應義塾大学の田口眞男氏は「NANDフラッシュ事業は、東芝本体から切り離してはいけないと見ていた。東芝という大看板を背景にした与信能力で、設備投資に向けた巨額の資金を銀行から得られていたからだ」という。ところが、その大看板はもはや事業の阻害要因。投資能力の増強や与信能力は、東芝以外から得る必要がある。

 アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏は「メモリー事業の特性を鑑みれば、専業の事業体制で経営した方が適している。分社化と外部資本の導入は飛躍のキッカケになるのでは」とした。総じて外部資本導入後の見通しは明るいとの意見が多い。

 ただし、「東芝メモリの事業は、米Western Digital社との協業体制を維持する必要がある」(IHSテクノロジーの大山 聡氏)。両社は相互依存関係にあり、この協業体制こそが東芝メモリの強みの源泉だからだ。