「日経エレクトロニクス」2017年6月号のEmerging Biz「中国勢がイヤホンを席巻、売り方と造り方を解剖」を分割先行公開した後編です。前編はこちら

信頼の源は歌手や配信サービス

 中国流の商法の一方、一足早くBluetoothイヤホンが普及した中国内では新たな方法で信頼感を高めた企業が成長している。一つは著名人の参画。もう一つは大手音楽ストリーミング企業による企画販売だ。

 FIILブランド品を手掛ける中国Fengfan(Beijing)Technology(峰范)社は、中国出身のミュージシャンFeng Wang(汪峰)氏を創立者の一人かつ株主で監査役とした注7)。中国1more Shenzhen Acoustic Technology(万魔)社には台湾出身のミュージシャンJay Chou(周杰倫)氏が関与する。株主となった上で創意官(Creative Director)を務めている。1more社は、董事長も著名人である。台湾Foxconn(Hon Hai Precision Technology、鴻海)出身の台湾人KuanHong Hsieh(謝冠宏)氏だ。Hsieh氏は「iPod」や電子書籍端末「Kindle」を受注した立役者の1人で、事業群総経理という要職にあった。1more社はXiaomi関連会社から投資を受けており、2017年に深セン市場で株式を公開(IPO)する予定2)注8)

注7)Wang氏が董事長とした報道が多いが、それは誤り。
注8)Xiaomi社が2014年に99人民元(当時1700円前後)で発売した有線イヤホンは1more社が設計し、Hele社が製造した。同年に中国で最も販売量が多い有線イヤホンだったという。

 Bluetoothイヤホンの企画販売を手がける音楽ストリーミング企業としては、中国の大手2社がある。Beijing Kuwo Technology(酷我音楽)社とGuangzhou Kugou Computer Technology(酷狗音楽)社だ。いずれも120人民元(1920円)未満で発売し、2016年にTaobao.com(淘宝網)でトップ級の販売量を達成した。