IoT、メイカーズ。これらが次の産業の牽引役と言われて久しい。しかし中身はまだ生煮えだ。グローバルでニッチな需要をとらえる前に、ハードウエアの量産や拡販で失敗する企業が後を絶たない。台湾や中国ではこれらの障壁を乗り越えることを、強力に支援する新たな企業が増えている。この動きや手法を見ていこう。

 「ロットが小さいと、ろくな会社に製造を頼めない」「実際に製品に触れてもらえず魅力が伝わらない」。IoT機器を手掛けるサービス企業やハードウエアスタートアップ(以下メイカーズ)が抱える課題を解決しようとする企業が中国や台湾で増えている。中国Seeed Studio(矽遞)社のようなアクセラレーターやインキュベーターに限らない。デジタル民生機器の設計、製造を牛耳る台湾系のEMS/ODM企業や家電流通会社までもがメイカーズを支援し始めた(図1)。

図1 支援会社を使いこなす
図1 支援会社を使いこなす
メイカーズと呼ばれるハードウエアスタートアップや異業種からIoT機器開発に参入する企業は、支援会社を使うことで生存競争を生き抜く確率を高められる。本記事で取り上げる企業の事業範囲も示した。
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 台湾Foxconn(鴻海)社 董事長のTerry Gou(郭台銘)氏は言った。「少数のブランド企業だけに経営資源を提供する時代ではない。その20~30%をメイカーズに向ける」注1)。メイカーズ支援の動きは単なるブームに終わりそうにない。支援企業自身が将来の成長に不安を抱くからだ。民生機器市場のほぼ唯一の牽引役だったスマホは、安価になり需要も鈍り始めた。「3C(Computer、Communication、Consumer Electronics)はもはや日用品、消耗品だ」(量販店の中国CyberMart(賽博) 董事長のSteve Chang(張瑞麟)氏)。従来通りの既存品の改善だけでは自らが衰退する。

注1)MediaTek(聯發科)社はIoT機器向けハードウエア/ソフトウエア開発環境「Linkit」を用いた機器開発プログラムを提供するだけでなく、3億米ドル(360億円)をベンチャー企業に投じていく。例えばAthentek(歐勝)社は10万米ドル(顕在株シェア1%)の投資を受けながら、このプログラムで子供の見守りサービスを開発している。