クルマに関しては、他のイベントと同様にADASや自動運転がelectronicaでフォーカスされたトレンドである。ただし、他のイベントでは、レベル4やレベル5といった完全自動運転を一足飛びに実現するような喧伝が目立つ一方で、electronicaではあくまで堅実に自動運転の実現を目指す動きが見て取れた。すなわち、ADAS技術を着実に実現し、それを積み上げて自動運転へと移行する。

 このような姿勢は、前日に行われた自動車関連の講演会「electronica Automotive Conference 2016」にも見られた。トップに登壇した基調講演者の米Daimler Trucks North America社のSteve Nadig氏が紹介したのは、トラックの隊列走行に向けた自動運転技術の「Highway Pilot」だった(関連記事)。今回のelectronicaに際して、オランダNXP Semiconductors社がミュンヘン市内で行ったのも、トラックの隊列走行のデモンストーションだった(関連記事)。高速道路のトラックの隊列走行向けの自動運転は、市街地の乗用車の自動運転に比べて実現が比較的容易である。

「electronica Automotive Conference 2016」でトラックの隊列走行を紹介(写真:日経エレクトロニクス)
「electronica Automotive Conference 2016」でトラックの隊列走行を紹介(写真:日経エレクトロニクス)
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 同講演会には、ドイツBMW Car IT社からの講師、Wolfgang Lenders氏も登壇した(関連記事)。同氏によれば、自動運転時代の到来を踏まえて、ドイツBMW社では車載ソフトウエアの運用管理方針を変えた。従来、車載ソフトウエアはそれぞれ独立に動くECU上のマイコンに載っていた。このため、車載ソフトの運用管理はECUメーカーであるTier 1に任せておけば良かった。自動運転車では、中央制御用コンピュータの下で大半のECUが連携して稼働する。「クルマ全体として車載ソフトを運用管理する必要があるため、その役割は自動車メーカーが担うようにした」(Lenders氏)。

 Tier 1大手のドイツRobert Bosh社も、同講演会に登壇している。同社のMarkus Sonnemann氏はADASや自動運転向けの重要部品としてMEMSセンサーを紹介した(関連記事)。現在のクルマには1台あたり50個以上のMEMSセンサーが搭載されている。その数は、今後、ADASや自動運転の実用化が進むにつれて、さらに増えるという。特に期待されるのが、MOEMS(Micro-Opto-Electro-Mechanical Systems)だとし、その適用先として、ヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)、インテリジェントなヘッドランプ、ライダー向けのマイクロミラーを挙げた。