2015年11月8日まで開催の「第44回東京モーターショー2015」からは、自動車の電装品関連の開発の焦点が、自動運転時代を見据えた新技術へ移っていることがうかがえた。ほとんどの自動車メーカーが自動運転の実用化に向けたロードマップを明確化。運転席からステアリングを“消す”といった提案や、ヒトとの関係を刷新する提案も出てきた。

 今回の東京モーターショーで自動運転技術をとりわけ強くアピールしていたのは日産自動車だった。同社の「ニッサンIDSコンセプト」は、自動運転モード時にステアリング(ハンドル)がダッシュボード内に格納される(図1(a))。代わって現れるのはタブレット状の端末だ。ダッシュボードのディスプレーと併せて乗員とコミュニケーションを図る“ゲート”となる。車両が事務的に自動運転するだけでは乗員は愛着を抱けないだろう。乗員との密なコミュニケーション機能を盛り込み「信頼できるパートナー」を目指すという。手動運転モードを備え、運転の楽しさを堪能できると同社は強調している。自動運転の利便性を提供しつつ、所有欲を喚起する狙いがある。

図1 自動運転時代が目前に
図1 自動運転時代が目前に
東京モーターショーの開催に合わせて自動運転車の実用化に関する発表が相次いだ。(a)は日産自動車の「ニッサンIDSコンセプト」。(b)は同社が公道での自動運転の試験に使っている「リーフ」をベースとした車両。(c)は富士重工業の自動運転を見据えた「SUBARU VIZIV FUTUREコンセプト」。(d)はホンダが会場で見せた公道実験の様子。(e)は同社の自動運転の実現に向けた計画。(f)はトヨタの自動運転に対する考え方をまとめたパネル。同社は、自動運転に使える人工知能技術に関する新会社設立を11月6日に発表した(記事)。((b)の写真:日産自動車)
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 日産に加え、富士重工業、ホンダ(本田技研工業)も新たに自動運転の実用化計画を明らかにした(図1(b)~(e))。日産は2018年までに高速道路での自動運転支援、2020年までに一般道での自動運転の実用化を目指す。モーターショー初日に始めた公道実験には「リーフ」ベースの車両を使った。8台のカメラで周囲を見渡して周囲を認識する機能と、周囲を3次元計測するレーザースキャナーを載せた。