「世界初の7nmチップになる可能性がある」。GMOインターネットは2017年9月、ビットコインのマイニング(採掘)事業への参入を発表した。計画の鍵を握るのは、最先端の7nmプロセスで製造する半導体である。同社がASICまで開発する理由を、仮想通貨に詳しいITジャーナリストの星暁雄 氏が解説する。(本誌)

 GMOインターネット(以下、GMO)は、約100億円を投入してビットコインのマイニング事業に参入する。まず、1チップで2重のSHA-256ハッシュ関数を毎秒10×1012回計算できる(10Tハッシュ/秒(H/s))能力を備えるマイニング用ASICを開発。最先端の7nmプロセスで製造する。同プロセスでの量産は、商用チップとしては世界で最も早い時期になる可能性がある。同社は2018年前半に約5万個のASICを製造し、電力が安い北欧のデータセンターに配置してマイニングを実施する計画だ。

 同社が自社でASICの開発やデータセンターの建設まで手掛けるのは、マイニング事業の競争力に直結するからだ。ビットコインのマイニング事業は、計算能力と電力コストだけで収益の多寡が決まる注1)。電力対性能比が優れる最新の半導体をいち早く投入し、電力価格が安い立地で事業を立ち上げるために、自ら開発や建設に乗り出した注2)

注1)ビットコインのマイニング(採掘)は、膨大な計算能力が必要な問題を解く作業に当たり、いち早く解を求めた事業者が報酬を得る。
注2)GMOの発表に続いてDMM.com、SBIホールディングスもマイニング事業参入を発表。またマイニング事業大手のBitFury Group社も東京オフィスを開設した。

 今、ビットコインのマイニングでは中国国内の事業者たちが合計70%以上のシェアを持つ。背景には、安い電力コスト、そして中国Bitmain Technologies社が供給するマイニング用ASICの存在がある。GMOの参入は中国寡占の状況に一石を投じる形となる。

 GMOの勝算は、マイニングの原価を中国の事業者よりも下げられることにある。まず、GMOのASICはBitmain社の現行製品と比べて電力対性能比が約2倍良い。加えて、データセンターの電力コストもかなり低いようだ。GMOは、データセンターの場所自体が競争力に関わるとして、具体的な地域は秘密とする。ヒントは他の事業者の動向で、アイスランドやスウェーデンに施設を持つマイニング事業者は既にある。